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101. ウィーンスタイルのメンデルスゾーン「スコットランド」:メンデルスゾーンの交響曲中最も個性的、躍動的な唯一名作、いずれの楽章からも彼が旅した時の想いが切々感じ取れる。しかしこの感慨を如実に表現するのは結構難しく、クリストフ・フォン・ドホナーニ/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏もスコットランドらしい程良く透明感のある清々しい雰囲気を出せてはいない。逆に暖かな優しい位の演奏だが、艶やかな粒揃いの弦に支えられたウィーンスタイルが心地良く旅情を誘う。鈍重気味な終楽章終盤を除いて、細部まで丁寧な仕上がりの好感の持てる演奏。1976年とは思えない好録音。2月20日朝8:33~ 約42分間。かつてシャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団を聴いて息を呑んだ。まさにスコットランドの風土を彷彿させる秀演であった。
102. 真ともな好演、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2:映画音楽にもなった人気曲だが、大らか、大味な曲想のせいか演奏はとかく緩慢、生温くなり勝ち。いかにしてメリハリをつけるか、情感をスマートに表現するかが問われる中、ダニール・トリフォノフ/ヤニック・ネゼ・セガン/フィラデルフィア管弦楽団の演奏は芯のしっかりした深みのあるソロ、豊潤で抑揚の大きなオケ、いずれもかなりロマンチックだが、アクがなく後味が良い。数少ない真ともな好演。2月27日朝8:33~約42分間。
103. マーラーの第5、精彩を放つバーンスタイン/ウィーンフィル:雄大、澄み渡るような牧歌的な調べがいかにもマーラーの交響曲らしい。トランペットの高鳴りが印象的な冒頭楽章が聴きどころ。レナード・バーンスタインは劇的、大振りながら精度、密度も高く、ウィーンフィルの上質な響き、魅力を存分に引き出している。長時間ものにしては疲れを感じさせない匠の成せる妙技。1987年9月フランクフルトでのライヴながら好録音。3月7日朝7:52~約80分間。なお同時期ロンドンでのライヴも悪くないが、前者のような凄み、踏み込みが今一で音質も不十分だ。
104. 別世界、宇宙を満喫できる神秘的なホルスト「惑星」:別世界に引き込まれ、脳が洗われるような超神秘的な名曲、何度聴いても飽きない。異色の名作なだけにプロの演奏であれば一応様になり、3月22日朝8:02~約51分間NHKFM放送予定のウィリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団/ニューイングランド音楽院合唱団も標準以上に聴ける。管、弦いずれも惜しみなくガンガン鳴らす豪華な響きが楽しめる一方、終曲の後半、合唱が現れるところからが益々神秘的で我を忘れるように美しい。1971年の録音とは思えない好音質。ただしこの曲ならばほぼ同年に録音されたバーンスタイン/ニューヨークフィル盤が光る。音質は前者よりやや劣るものの、メリハリが効いて劇的、特に第4曲「木星」の躍動感、開放感は筆舌し難い。
105. 夜に因んだ奥ゆかしい選曲、セレナードとノクターンから:セレナードはシベリウスのop.69の2曲、ノクターンはショパンのお馴染みop.9-2、15-1、55-2そして名作の嬰ハ短調遺作。前者はマイナーながら風趣深い、セレ ナードらしからぬ起伏の感じられる曲で、ジョセフ・スウェンセンのヴァイオリンがくっきり浮き立ち、バックのユッカ・ペッカ・サラステ/フィンランド放送交響楽団が郷愁を誘う好演。後者はウラディーミル・アシュケナージのピアノ、何時になくひたむき、可憐で魅力的、殊に常々凡演が多いop.9-2が珍しく清純、エレガントで印象的。4月9日朝8:35~約40分間。