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過去の掲載記事(22)

106. フランスのエスプリをプーランクとフェヴリエによる名演で:プーランクの2台のピアノのための協奏曲はフランスのエスプリに富んだ、ユーモアと哀愁を帯びた、洒脱な名曲である。これをプーランク自身およびジャック・フェヴリエとジョルジュ・プレートル/パリ音楽院管弦楽団が奏した曲想通りの名演がある。骨格のしっかりしたかつ情感の籠った両人のソロそして凝縮した洒脱なオケ、1957年のモノラル録音らしからぬ好音質。4月24日朝7:44~約26分間。更にプーランクの最晩年1962年のステレオ再録盤ではほぼ同じ演奏にスケール感、立体感が加わる。

107. 見直したベートーヴェン弦四op.18-5、アルバンベルクQのお蔭:ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中op.18は初期のもので、軽妙とは言えマイナーの域を出ない。ところがアルバンベルク四重奏団によるop.18-5は常識を覆すほどに聴き栄えする。愛らしく、極めて美しく、若々しい。中、後期のものとは異なりさわやかだが、厚み、密度が感じられる点はやはりベートーヴェンだ。ライヴながら聴衆が一心、心酔していたのか静謐で透明感、臨場感のある好録音。4月19日朝7:47~約35分間。これほど見事に聴かせるのだからアルバンベルクQは各メンバーがかなりの力量とセンスの持ち主に違いない。なるほど同Qによるop.131、op.132も更に素晴らしい。

108. ムターが光を当ててくれたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第2:モーツァルトとしてはマイナーなニ長調K.211、印象に残る演奏がない中、アンネ・ゾフィー・ムターのソロと指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団が光を当ててくれた。幾分弱い箇所はあるが、可憐、エレガント、心に沁み入るソロと優雅、的確なオケ、お馴染みの第3~5番と遜色無く聞こえる快演である。4月19日朝8:14~約26分間。

109. フルートの饗宴、ドビュッシーのソナタとニルセンの協奏曲:ともにフルートの技量のみならずセンスが演奏の鍵となる幻想的な曲。前者はヴィオラとハープを伴う純フランス風の上品な奥行を感じさせる魅力作、ジャン・ピエール・ランパル/ピエール・パスキエ/リリー・ラスキーヌ、往年の名手による滋味深い演奏、殊に豊潤なフルートの音色が注目の的。後者は郷土の薫りを醸しながら結構垢抜けした彫の深い、部分的にユーモラスな異色作、エマニュエル・パユ/サイモン・ラトル/ベルリンフィルハーモニー管弦楽団による鮮烈な演奏、そつの無いソロと各パートが上質なオケ、クラリネットの陰の活躍も印象的。5月2日朝8:30~約45分間。

110. チャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出」、真摯まともな演奏:ポピュラーな彼の代表作の一つ。情熱的なので一般に演奏がくどくなり勝ち、またピアノ三重奏なので弦が劣勢になり勝ちな中、ウラディーミル・アシュケナージ/イツァーク・パールマン/リン・ハレルの演奏は各パート、バランスがとれ真摯まとも。弦、特にヴァイオリンはよく歌い、品格もあり、ピアノもこなれていて格調高い。印象的なのが第1楽章冒頭チェロの序奏に続くヴァイオリン、可憐でほどよく情熱的。6月12日朝7:41~約55分間。

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