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111. 希少な好演、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1op.49:ロマンチック、メローディアスなよく行き届いた名作だが、聴ける演奏は極少ない。概して弦、特にヴァイオリンが力負けする凡演になり勝ち。イツァーク・パールマン/ヨーヨー・マ/エマニュエル・アックスの演奏にもヴァイオリンのひ弱さが顔出す部分はあるが、情感の豊かさ、ハーモニーの美しがそれをカバーしていて好感が持てる。殊に滋味深く、テンポ、強弱が微妙なピアノ、アックスが本領を発揮している。終楽章が弦とピアノのバランスが絶妙で印象深い。第2楽章もしかり、看板の第1楽章も尻上がりに熱を帯びて来て良くなる。6月19日朝7:52~約36分間。

112. 屈指の名作、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番:抒情的で琴線を揺さぶるような、全楽章とも抜群の傑作、名作の割にはあまりポピュラーでない。名盤も優雅で情熱を帯びたローラ・ボベスコ/クルト・レーデル/ライン・パラティナ国立管弦楽団ほか極少ない。しかし凡演でも曲の素晴らしさに助けられある程度楽しめるもの。サルヴァトーレ・アッカルド/エリオ・ボンコンパーニ/ローマフィルハーモニー管弦楽団も概してややのろく、ソロが第1楽章は部分的にもの足りない、終楽章は大雑把など満足ではないが、曲想に合った、オケ共々形を成した偉丈夫な、ある程度楽しめる演奏。6月26日朝7:32~約41分間。

113. 血を通わせたフルニエとケンプ、ベートーヴェンのソナタ第3:いずれの楽章もメロディアスかつ充実した聴き飽きないチェロソナタの名曲、この名作に血を通わせたのがピエール・フルニエとヴィルヘルム・ケンプ、匠同士が意気投合、一体化した力演である。フルニエのいつもながらの優雅さに随所気合いが籠り、ケンプもそれに呼応して随所巧みに緊迫する。殊に終楽章は尻上がりに聴き手を心地良くぐいぐい引き込んでいく上品な熱演でもある。1965年のライヴとは思えない良質のステレオ?録音。7月12日朝8:25~約30分間。

114. モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲K.299:互いに異質ながらエレガントな両ソロがオケと溶け合う優雅な名曲である。しかし演奏は軽快、淡白に終始し勝ちで、特にソロの力量、才能が出来不出来の鍵をにぎる。その点両巨匠ランパルとラスキーヌが共演した2つの盤は模範的。ともにパイヤールが指揮したJ.M.ルクレール器楽アンサンブルのものとパイヤール室内菅のものである。いずれも優美で滋味深い表現が感動的、カデンツァにひときわ躍動感とともに名人の芸格を感じる。双方を敢えて比較すると、前者の方が密度がやや高くて良いが僅差、後者の方が録音は良い。後者を8月7日朝7:31~約38分間。

115. ジネット・ヌヴーを聴ける絶好のチャンスだったが、音質が今一:惜しくも若くして亡くなった往年の名ヴァイオリニスト、深いボーイングとスケール感が持ち味で、時によって鮮烈、幻想的、歌謡的あるいは情熱的と様々な表情を見せる。そんな彼女が残した数々の名演が8月5日~8日の毎日19:30~21:10、NHKFM「名盤を通して知る大芸術家シリーズ」にて放送されたが、やはり表現力が豊かで悲愴感、寂寥感が心に沁み入った。しかし残念ながらSP原盤からではなく復刻LP盤からの放送らしく音質は今一つ、殊にブラームスのヴァイオリン協奏曲op.77、ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団も音質が粗めで期待外れであった。かつて日本フォノグラム社が再生技術の粋を凝らして出したLP(フィリップス30PCー15)では1948年のライヴとは思えない巾、奥行きとも感じられる緻密な音質で聴けた。オケに埋もれないディオニソス型の鮮烈な、ひたむきな、透明で情感豊かな、緊密度、迫力とも十分なソロ、ソロを引き立てながら壮大な演出を繰り広げるオケ、非の打ち所が無い名盤中の名盤であった。

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