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126. シューベルトのアルペジョーネソナタを枯淡、精緻な名演で:いかにも彼らしい歌謡的な快作であるが、メロディーが薄手、通俗的な感を否めない。それがムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)/ベンジャミン・ブリテンの演奏では気にならない。枯淡に、エレガントに曲の弱点を巧みにカバーしている。曲全体を知り尽くしての円熟した、精緻な芸格を感じさせる名演である。12月5日朝8:40~約35分間。
127. マイナーな曲が光輝いた、グリーグのヴァイオリンソナタ第2:演奏次第で曲は良くも悪くも見違えるほど変わる。マイナーなこの曲がオーギュスタン・デュメイ/マリア・ジョアン・ピレシュの快演によって光輝いた。活き活きとしてみずみずしいヴァイオリンと気配りの効いた粋なピアノ、双方が溶け合い、お国の情感がほのかに香る。12月6日朝7:26~約27分間。
128. 板に付いた流麗な快演、モーツァルトのCl.協奏曲K.622:ザビーネ・マイア(バセット・クラリネット)は音の繋がりが自然で滑らか、すっきりしていて味わい、旨味がある。実に巧い。バックのハンス・フォンク/ドレスデン国立管弦楽団もソロとの調和が巧く、これもすっきりしていて結構ムーディー、心地良い。美しい旋律に彩られた名曲なだけに様になる演奏が数々ある中、トップクラスに入る。12月17日朝8:44~約31分間。
129. バティアシュヴィリの好演で蘇ったプロコフィエフの協奏曲第2:このヴァイオリン協奏曲は弾き手に恵まれないと曲の魅力、真骨頂が表出し得ない。この難曲?を普段はあまり目立たないリサ・バティアシュヴィリが見事に蘇らせた。線は細めだが、くっきり浮き立つ、ほど良く情 熱的な深みもあるボーイングが聴き手を魅了する。オケのヤニック・ネゼ・セガン/ヨーロッパ室内管弦楽団もくっきりしていてソロと巧く溶け合っている。特に第2楽章が出色の出来。録音が抜群で臨場感も楽しめる。2020年1月28日朝8:44~約31分間。
130. ウィーンフィルが上質な響きを奏でるマーラーの交響曲第4:のどかだがクライマックスの目立たない長大曲、ハーモニーを大事にしながら各パートを個別に引き立てる造りなので、楽器毎の音色、響きの違い、磨きのかかった各プロの業が楽しめる。オーディオファンにとっても恰好のソースである。しかし上質な響きを奏でる粒揃いのオケと高精細な録音が前提で、その点ロリン・マゼール/ウィーンフィル/ソプラノ:キャスリーン・バトルの盤はよく仕上がっている。弦は肌触りが良く、細かいニューアンスまでよく表現されている。菅もほのぼのとして美しい。歌手も可憐で如才ない。1時間を超える退屈な部分も多い曲なので、比べて劇的、情熱的な第3楽章、オケとソプラノのコラボが楽しめる終楽章のみ聴くのも良い。2月5日朝7:30~約75分間。