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141. ロマンと情熱の泉、エルガーのヴァイオリンソナタop.82:エルガーの存在を印象付けた粋な魅力作。ヴァイオリンが引き立つ、ロマンと情熱の泉。全3楽章ともよく練られており、充実している。マキシム・ヴェンゲーロフ/レヴィタル・ハハモフの傑出はせずとも曲のツボを押さえた巧演、6月9日14:20~約30分間。
142. リストの「慰め」、オピッツが美しく、優しく包み込む:「ため息」とともにリストの数少ない抒情的小品であり、その名の通り慰められる。ゲアハルト・オピッツのピアノには際立つものはないが、美しく、優しく包み込むきめ細やかさがあり一聴に値する。全6曲の中、第3、第6曲、殊に後者が曲、演奏とも詩的、メローディアスで光る。6月23日14:50~約25分間。
143. ピカ一のヴァイオリンソナタ、ブラームスの「雨の歌」:第1番の終楽章は「雨の歌」そのもの、渋くしっとりした味わい深い名曲中の名曲である。ヴィルデ・フラング/ミハイル・リフィッツの演奏(2019,紀尾井ホールでのライヴ)には光るものがなく、コクも足りないが、ムーディーで曲想が的確に表出されている。昨今の凡演ばかりな中一筋の灯が見えて来る。7月1日19:49~約16分間。なお他楽章も曲は随一だが、演奏は良し悪しムラがあり褒められない。名盤はデ・ヴィート/E.フィッシャー、ルビーの輝きを以ってひたむきに訴えるヴァイオリンと彫の深い、テンポ取りが巧みで粋なピアノ、絶妙な調和の下昇華した名演中の名演である。全楽章とも太鼓判を捺す。
144. ポリーニならではの豪壮な力演、ベートーヴェン「悲愴」:お馴染みのピアノソナタ、全3楽章とも心を揺さぶる青年ベートーヴェンの傑作、あま多の録音中、マウリツィオ・ポリーニの演奏は印象的である。先ず冒頭打鍵のインパクトにドキッとさせられ、そのまま豪壮なめり張の効いた力演に心を奪われる。中間楽章は極自然な流れの中に情感が込められ心地良いし、終楽章も情熱を巧くコントロールした力演である。2002年の録音。7月10日朝7:26~約22分間。なお引き続き、同じポリーニが弾くベートーヴェンのソナタNo.12も豪壮で造形のしっかりした好演(1997年のライヴ)、マイナーな曲ながらここまで聴かせられるのも彼ぐらいか。
145. 神秘の魔界、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第7番:この曲も奇異で、彼の真骨頂である魔性と神秘性が随所に出ている。異質なテンポも魔性の発揮に一役買っているようだ。3楽章からなるが、いずれも有意義で、短時間に凝縮していて好ましい。曲想が特異的なのでプロならば力を発揮しやすそう、ヴェリタス四重奏団の弾きぶりも精気、起伏、厚みがあり聴き栄えする(2019年上野学園ホールでのライヴ)。7月15日19:48~約16分間。