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146. アルバンベルクQによる妙演、ベートーヴェンop.18第2:彼の弦楽四重奏曲としてはその後の中、後期のものと比べ充実感が今一つだが、師匠ハイドンのものより凝っていて時代を画している。第1楽章など若々しくエレガント、親しみ易い。全楽章を通してすっきり、均整のとれた印象。そんな佳作をアルバンベルク四重奏団は一段深く掘り下げ、厚みを出し、かつエレガントに仕上げ昇華している。粒揃いのメンバーによる密度の高い、絶妙のハーモニーが聴け、みずみずしい。7月17日朝7:40~約30分間。
147. フランスのエスプリいっぱい、 プーランクのピアノ協奏曲:現代風のメロディーとリズムの中に洒落っ気と気品が薫る名曲、2台のピアノ協奏曲とともにフランスのエスプリをいっぱいたたえた彼の代表作である。そしてガブリエル・タッキーノ/ジョルジュ・プレートル指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏でムード、切れ、テンポすべてこれぞフランス本場ものと実感できる。洒脱なオケにくっきりしたソロ、両者が溶け合う秀演である。ただステレオ初期の録音か精度が今一、オケのハイピッチが粗い。7月30日朝8:52~約23分間。
148. 希少な共演、ポリーニ/ベームのブラームス・ピアノ協奏曲第1:いぶし銀のように渋く、重厚そして壮大な名作で、足腰のがっしりしたソロと精度、密度の高いオケを必要とする。ベテラン俊英のマウリツィオ・ポリーニと老巧カール・ベームとのウィーンフィルを擁しての共演はこの条件にピッタリ、またと無い貴重な録音。第1楽章など余計な情感を廃し筋を通す説得力のあるソロ、尻上がりに熱を帯びてくる。コーダはオケ共々往年の蒸機C62が特急「つばめ」を牽引して疾走するかのような迫力、青年ブラームスの真骨頂がよく出ている。第2、第3楽章も手堅くまとめている。8月5日朝7:29~約50分間。なおバックハウス/ベーム/ウィーンフィルによるLP初期の名演が耳を離れない。豪快かつ直線的な第1、第3楽章、彫の深い透明感のある第2楽章など印象的だ。ポリーニもこれには及ばない。
149. ピレシュならではの微妙なバッハ・ピアノ協奏曲BWV1052:本来チェンバロ協奏曲だが、チェンバロがオケに埋もれ易くその繊細な音色を活かせない。ピアノによる演奏ならばオケに負けず自在に表現でき、聴き栄えする。バッハもその時代であれば躊躇なくピアノを用いたことだろう。マリア・ジョアン・ピレシュはむしろピアノが突出しないようオケとの調和を心掛け自然を装う中に滋味を滲ませる微妙な好演。そんな中第2楽章は彼女の表現の丈が存分に働いた緻密な力演である。オケのミシェル・コルボ/グルベンキアン室内管弦楽団も流調な調べの中随所キリッと光る、旨味ある好演。8月13日朝7:41~約31分間。
150. 期待に応えたゼルキンと豪壮なバック、ベートーヴェンの「皇帝」:ピアノ協奏曲ながら彼のヴァイオリン協奏曲とともにオケの充実した力作、交響曲のようにスケールがある。ソロ・ピアノには相当なテクニックのみならず弾性と剛性が必要だが、ルドルフ・ゼルキンはいずれにも恵まれ、かつ渋いのでこの大曲に向いている。そこでレナード・バーンスタイン/ニューヨークフィルとの共演はどうか、弱い箇所もあるが、要所々を堂々としっかり鳴らした本格的な演奏でほぼ期待通りである。オケも定評の「豪壮」そのもの、ソロとの調和が巧く爽快 でもある。全3楽章ともこれほど聴かせる演奏はそう無い。中でもソロが一音々にくっきり情感を刻み込む第2楽章は希少だ。8月14日朝8:30~約45分間。