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151. モーツァルト弾きピレシュの妙演、ヴァイオリンソナタK.301:ピアノの方が活躍する曲なので彼女に打って付け、持ち前のセンスの良さが随所にうかがえるエレガントな妙演、流石モーツァルト弾きである。ヴァイオリンのオーギュスタン・デュメイも珍しく芯が通ってピアノに埋もれず、快活、可憐な部分も、しかし第2楽章中間部の聴かせ処で残念ながら腰砕け、小粒ぶりが出てしまった。8月20日朝8:54~約21分間。やはりグリュミオーならばと思ってしまう、彼の華やぎ、優美さが元祖モーツァルト弾きハスキルの名フォローで引き立つかつての名盤のことを。
152. フランスの香り高い快演本場もの、サンサーンスの交響曲第3番:優雅で開放的、一面劇的、大規模な彼の代表作、特にオルガンが高らかに響く終楽章は天にも昇ったように快適である。そして本場フランスのジョルジュ・プレートル/パリ音楽院管弦楽団/モーリス・デュリュフレ(オルガン)によるフランスの香り高い快演がある。豊潤な弦によく通る管、豪華絢爛かつ統制がよく効いている。オルガンはさん然と轟き、時にはオケに溶け込んで厚みを補い助ける。後味はすがすがしく、気分爽快になる。1960年代の録音と思われるが、音質も良好。8月19日15:09~約41分間。
153. 名宝らしさの伝わる好演、ブラームスのヴァイオリンソナタ第3:彼の第1番とともにヴァイオリンソナタの名宝、押し出しの効いた心に沁み通るような調べが堪らない。ところがLP初期往年の女王デ・ヴィート/巨匠E.フィッシャーによる芳香の絶品以来ろくな演奏に出会えない。コリヤ・ブラッハー/オズガー・アイディンの演奏もオーソドクスで満足ではないが、可憐さやボーイングの美しさが垣間見え無視できない。名器ガルネリを擁しているとか、魅力の一端を引き出している。2019年6月トッパンホールでのライヴ。9月2日19:48~約25分間。なお引き続き放送される同デュオによるベートーヴェンのクロイツェルソナタも悪くない。
154. 爽快、華々しいベートーヴェン第8、バーンスタインが本領発揮:レナード・バーンスタイン/ニューヨークフィルによるめり張り、スケール感、緻密さを合わせ持つ華々しい快演。オケの質に濁りがないからか近代的なイメージを抱かせる。聴き終わると爽快感いっぱい。ベートーヴェンの交響曲としてはマイナーなのをここまで聴かせるとは流石である。1963年の録音。9月11日朝8:44~約31分間。
155. 部分的には結構いけるブラームスの弦楽曲、アマデウスQが巧演:ブラームスは弦楽曲を数多く残しているが、重厚で思考的、哲学的なピアノを伴うもの以外は概して渋みが勝りとっつきにくい。弦楽五重奏曲op.111も例外ではないが、中間の2楽章は結構いける。穏やかで親しみ易い曲想、演奏次第で盛り上がる。アマデウス四重奏団/セシル・アロノヴィッツ(ヴィオラ)は厚みと立体感のある磨きの掛かった好アンサンンブルを聴かせてくれる。9月17日朝8:38~約30分間。