過去の掲載記事(32)
156. 素敵だったデュフォーのフルートリサイタル、プーランクほか:マテュー・デュフォーのフルート、浦壁信二のピアノ(武蔵野市民文化会館、2019年7月)、聞き慣れない両者なので意外だったが、素敵な演奏を聴かせてくれた。前者は輝かしい音色で流調、後者も裏方に徹してはいても、微細、巧み、もう少し顔出しても良かったか。特にプーランクやライネッケのフルートソナタ、ミヨーのソナチネ・第1楽章は趣深く聴き得であった。他も曲自体は今一ながら演奏がカバーしてくれ調べが美しかった。9月28日19:30~約100分間。
157. ワルターの全身全霊が込められた記念盤、ベートーヴェン第7:曲の要所々が懇切に歌われかつ切れ味鋭い壮絶な調べ、ブルーノ・ワルターの全身全霊が込められた記念盤、コロンビア交響楽団が彼の意気込みに答えた。ややスローテンポながら情感深い第2楽章と冒頭から絶妙のテンポ設定でぐいぐい攻める終楽章が特に印象的。得てして馬鹿々しく聴いていられない後者をここまで劇的に引締められるのは曲を知り尽くした巨匠の彼ならでは。思いの丈を思い切り表現した彼最晩年の秀演である。ただ艶が足りないのは1961年の録音だけに致し方ないところ。10月9日朝8:30~約45分間。
158. 不満な演奏でも名曲だから楽しめる、グリエールのハープ協奏曲:彼の代表作、全3楽章ともメロディアスでロマンチック、郷土色がほのかに香る個性的な秀作である。ところが満足な演奏が見当たらない。レイチェル・マスターズ/リチャード・ヒコックス指揮シティー・オブ・ロンドンシンフォニアの盤も例外ではないが、名曲だからある程度楽しめる。第1楽章は起伏、緩急を駆使した粋な仕上がり、第2楽章も控えめながらムーディーで先ず々。低調な終楽章だったが、ソロにもっと活躍してほしかった。10月15日14:33~約33分間。
159. 幸運だったタカーチ四重奏団のコンサート、ベートーヴェンほか:「ラズモフスキー」第3はオーソドックスながら各パートとも上質な音色によくハモっていて、全楽章ともきりっと充実している。10月20日20:14~約40分間。なおこの前に演奏されたドボルザークの「アメリカ」もムーディーかつ芯がしっかり、さわやかでもあった。これほどの好演に恵まれた聴衆は誠に幸運だった(武蔵野市民文化会館、2019年9月)。
160. 陰陽微妙な名演、セル/クリーブランドのモーツァルト第40番:冒頭のメロディーがお馴染みの交響曲、名曲中の至宝、全4楽章とも優美でわかり易く心をなごませてくれる。そこで演奏だが、幾多ある中、ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団の盤は先ず冒頭の陰が印象的など全体を通して陰陽微妙に統制の効いた名演である。強弱、テンポが快適で、幾分ずん胴な感じの第3楽章を除いてメリハリが巧妙。11月8日朝10:13~放送予定とお知らせしたのですが、実際聴いたのは違った演奏でした。申し訳ないことに、1967年のセッション録音のつもりが、その後1970年ライヴ(東京?)のものでした。前者に比べ終楽章を除い て冒頭幾分速めのテンポで明るいが、知らず々微妙に減速し陰ってくる。総じて前者と同じ印象で楽しめた。なおLP初期の若々しく明美なアンドレ・ヴァンデルノート/パリ音楽院管弦楽団の盤も貴重な一枚、モノラル録音ながら艶やかな弦が印象的だ。