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161. サンソン・フランソワが乗り気の好演、ラヴェルのピアノ協奏曲:フランソワは気分屋なのか出来不出来があるが、この曲には乗り気なようで打鍵が深く、香り高い。彼の真価である天性のひらめきと独特のテンポは最早窺えないものの、凄みは健在だし、円熟味が加わりAクラスの好演となった。バックのアンドレ・クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団も洒脱でソロとのハーモニーが巧みだ。11月19日朝8:50~約25分間。なおこの盤の裏面、同じくラヴェル、左手のピアノ協奏曲は更に曲が優れ、かつフランソワが鮮烈で惹き込まれる。
162. サリエリの快作、五色に輝くフルートとオーボエ協奏曲ハ長調:同じ木管ながら音色が両極とも言える、華のあるふくよかなフルートと清々しい郷愁を誘う透明感もあるオーボエを巧みに絡み合わせた快作。そしてオーレル・ニコレとハインツ・ホリガーが巧みに絡み合う名アンサンブルにケネス・シリトー/アカデミー室内管弦楽団の好フォロー、美しく五色に輝いた初々しい快演がある。11月26日朝7:36~約25分間。
163. 渋いブラームスの弦楽四重奏曲に旨味一入、バルトークQ:ブラームスの弦楽曲は概して渋く取っ付きにくい。このop.51-1も同様だが、噛めば噛むほど味が出る。しかし渋くても旨味の出せる演奏は稀有に近い。そうした中バルトーク四重奏団はヴァイオリンがくっきり、艶やか美しく曲全体を引き締め、他のメンバーは渋く、厚く、充実している。ブラームスの真骨頂の一つスルメを噛むような味わいが楽しめる。12月3日朝7:26~約35分間。
164. エマーソンQによる臨場感抜群のベートーヴェンop.135:ベートーヴェン最後期の弦楽四重奏曲、op.131や132と比べ今一つだが、演奏次第で光輝く。そしてエマーソン弦楽四重奏団が素晴らしい演奏環境を得て好演を残してくれた。まさにコンサート会場の最上席で聴いているような立体感、臨場感溢れるもので、艶やかな、のびやかな最高の音質に恵まれている。演奏自体も各パート颯爽として緻密、よくハモって、メリハリもある。1995年の録音。12月11日朝8:34~約30分間。
165. グリューミオの妙演、ブルッフのスコットランド幻想曲:地名を冠した音楽は風景を描くあまり平板になりかねないが、この曲はソロ・ヴァイオリンの活躍によって奥行、立体感を醸し出している。すなわちソロの質が演奏の鍵であり、アルテュール・グリューミオはベストとは言えないまでもその真価を発揮している。豊潤な音色を持ちながら時に物足りない彼が俄かに熱を帯び昇華したような妙演、真に抒情的である。バックのハインツ・ワルベルク/ニューフィルハーモニア管弦楽団もソフトに彼を包み込む好演で、それこそ幻想的なムードにひたれる。第1、第3楽章が聴き処。12月17日15:16~約34分間。