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過去の掲載記事(36)

176. マイナーでも演奏次第で光輝く、モーツァルトのピアノ協奏曲第8:彼の青春ほやほやの頃の作、K.246、当然ながら未熟なので並みの演奏ならば聴きっ放しで終わってしまうところ、惹かれて再度聴きたくなる好演もある。マレー・ペライアのソロと指揮、イギリス室内管弦楽団が精彩豊かに奏で、曲の面目を施した。シンプルながらこれほどにエレガントで気高い曲だったとは。終楽章など途中から陰影を帯びて来て次の第9番『ジュノーム』を想起させる。成長たのもしい頃の記念盤と言える。3月17日朝8:11~約26分間。

177. モンポウ自身による濃厚、詩的なピアノ「歌と踊り」:何気ない旋律からスペイン風の詩情が湧き出て来る、しかし郷土臭を感じさせない練度の高い造り、モンポウの代表作である。これをフェデリコ・モンポウ自身が弾いた貴重な録音がある。深く掘り下げた、濃厚、詩的な、考え抜かれた妙演、粒揃いとまでは言えない全12曲ながら聴き手を離さない。4月2日朝7:35~約51分間。

178. シェリングが熱演、サンサーンスのヴァイオリン協奏曲第3:ヴァイオリンのテクニックを効かした流麗な快作、メロディアスなのでプロの演奏であれば一応聴ける。ヘンリク・シェリングもそうした一人だが、見違えるほど活き活きとした熱演を繰り広げ、オケ共々颯爽として迫力がある(エドゥアルド・ヴァン・ルモーテル/モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団)。1969年当時、会場の環境、マイクの位置など録音技術の高度化も見逃せない。全3楽章とも均しく聴き栄えする。4月2日朝8:43~約32分間。

179. シューマンの旨味一入、ピレシュの弾く「森の情景」:シューマン円熟期の快作、全9曲からなるピアノ曲集だが、軽妙とは言え概して地味なので、単なるテクニシャンでは手に負えない。その点、マリア・ジョアン・ピレシュは違う、持ち前のハイセンスと精緻さが曲想をしっかり捉え、魅力を引き出している。艶やかで詩的、滋味も深い。ハスキル以来の名演かもしれない。4月6日朝7:55~約25分間。

180. オーボエ協奏曲のお手本、アルビノーニ のop.9-2:木管の中最も清々しく抒情的な音色故に重宝されるオーボエ、更にその特長が最大限活かせることからオーボエ協奏曲を多くの作曲家が手掛けて来た。そのお手本とも言える名曲が早バロック時代に生まれており、アルビノーニのこの曲もop.9-8とともに貴重な存在である。言わば短いながら粋が詰まった音楽の缶詰、味が締まってかつ豊潤、多くの後輩達が見習ったことだろう。メロディーが親しみ易くとても綺麗なので、概して演奏の欠点が目立ちにくいが、ピエール・ピエルロ/クラウディオ・シモーネ指揮イ・ソリスティ・ヴェネティ合奏団の演奏は先ずリッチで優美なオケ、次いで新鮮で流暢なソロ、特に第2楽章が印象的で心に沁み入る。4月9日朝7:27~約16分間。

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