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186. ケンプがいぶし銀の秀演、シューマンのクライスレリアーナ:彼の「子供の情景」より更に幻想的、グレイッシュな趣深い名作で、年とともに艶を増し、血が通い、旨味が加わっていたヴィルヘルム・ケンプに打って付け。いぶし銀の肌艶をし時として枯淡に、時として重厚にコントラストを巧みに付ける純ドイツ風の秀演である。5月25日14:05~約38分間。
187. ポリーニと優雅なオケ、モーツァルトのピアノ協奏曲 No.17:彼のピアノ協奏曲には名 作が多いが、その他の例えばこの曲も演奏次第で名作さながらに魅力が倍加する。マウリツィオ・ポリーニ(ピアノと指揮)/ウィーンフィルの演奏では優雅でリッチなオケが先ず目を引く。通常より大編成なのではと錯覚するほどだが、弦など穂先がくっきり鮮明で美しいし、管も滑らか、ふっくらした厚みもある。これぞ一流オケの真骨頂と言える。ソロも満点には届かないが強弱、緩急が巧み、結構艶っぽい。ポリーニは元々芯はしっかりしているが、ここまでエレガントとは意外で、モーツァルト弾きとして見直した。2005年ウィーンでのライヴ。5月28日朝7:57~約34分間。
188. 意外と聴けるショスタコーヴィチの24の前奏曲 op.34:「前奏曲」と言えば先ずショパンであり新境地を感じるが、彼に続いて次々登場したものは概して単調で影が薄い。と思って聴いたショスタコーヴィチが意外に聴き栄えする。超自然、奇異、幻想を基調としながら曲毎に彼独特の個性が顔出したり引っ込んだりと変化に富んでいる。時折気になるアクがないので聴き易い。演奏するオリ・ムストネンは馴染みが薄いが、しっとり、機敏によく曲に乗ってマッチしている。6月24日朝8:41~約34分間。
189. 血の通う好演、 モーツァルトのバイオリンとビオラ協奏交響曲:彼青年期の準名作、K.364。概して明朗、円滑な曲だけに表面的な凡演になり勝ち。二人のソロがしっかり踏み込むかが、厚み、立体感に繋がり鍵となるが、アイオナ・ブラウン/今井信子/アイオナ・ブラウン指揮アカデミー室内管弦楽団の演奏は、両ソロとも中堅で風格こそないがハーモニーが素晴らしく血が通う、いじらしくもある。オケも優美、柔和、端正。6月30日朝8:05~約36分間。
190. 精気漲るセル/クリーヴランド、モーツァルトの交響曲 No.39:第40番とともに彼の遺した交響曲の名作中の名作、殊に第1楽章、第1主題の美しさにはうっとりさせられる。幾多ある演奏の中、ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団はテンポ、強弱、情感ともに緻密で清美。カール・ベーム/ベルリンフィル盤も格調高く、Aクラスに入るが、それよりくっきり、精気が漲っていて良い。1960年頃の録音だが、抜群の音質。6月30日朝8:39~約32分間。