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201. 純真、自然なソロ、ショパンのピアノ協奏曲 第1:ショパンお馴染みの代表作、ピアノ協奏曲の中ロマンチックの究極と言える名作である。しかし第1楽章の冗長なオケの前奏は唯一欠点で、ここを洒脱にカバーできるか演奏に問われる第一関門になる。ユンディ・リのソロと指揮、ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団の演奏ですが、オケはこの関門はやれやれと言うところで以降も今一つピリっとしないが、ソロと無難に調和している。一方ソロは風格こそないが、純真、自然かつ間拍子の取り方に妥協がなく緻密で好ましい。殊に高音に張りと輝きがあるので、オケから浮き立ち快適。異例のスローペースながら妙味を引き出した中間楽章ほか全楽章とも好調なソロはそうない。2017年の録音。9月24日朝7:32~約46分間。
202. マルティノン/フランス国立による高雅、洒脱な幻想交響曲:品格の問われる「断頭台への行進」を除けば、色とりどりメロディー・メニュー一杯のコース料理みたいなベルリオーズの快作、文字通り幻想的、劇的でもある。演奏にはフランス風の高雅さと洒落が必要であり、地元フランスの指揮者、オケが好演に繋がる近道と思われる。シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団とジャン・マルティノン/フランス国立放送管弦弦楽団の演奏はその双璧で、共に格調高く、洒脱、曲想通り幻想的である。強いて比べると前者の方が凄み、コントラストの強さが感じられる。しかし僅差で、後者の方が録音年代が遅い分音質は良く、色彩が綺麗、トップクラスであることに変わりない。9月24日朝8:16~約59分間。
203. グリュミオー/ロザンタールが出色の秀演、スペイン交響曲:ラロの代表作、オケが活躍し場を盛り上げるヴァイオリン協奏曲、文字通りスペイン風の名作である。ソロ、オケともに演奏のハードルは高く、印象に残る好演が稀有な中、アルテュール・グリュミオー/マニュエル・ロザンタール指揮コンセールラムルー管 弦楽団は先ずオケがえぐるように颯爽、洒脱ながらロマンチック、極度にフランス風、グリュミオーも情熱を込めて踏み込み、彼独特の可憐な音色で響かせている。ソロ、オケとも出色の秀演である。いずれの楽章もトップクラスの演奏だが、特に第4楽章がとりわけ幻想的で心に迫り沁み入る。1963年の収録とは思えない好音質で聴けるのもありがたい。10月4日15:11~約35分間。
204. バルトークの真骨頂に溢れた好演、ヴァイオリン協奏曲第2:彼の真骨頂である異風、奇抜、鋭利な上、明暗自在かつ幻想的なソロ、オケともに活躍する代表作。ソロには技巧はもちろん切れ、迫力、情熱が、オケには演出力と交響曲並みのスケールが必要だが、パトリシア・コパチンスカヤ/ペーテル・エトヴェシュ指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏は満足に近い。ソロはひ弱な部分もあるが、概して鮮烈、緻密、オケは結構劇的、幻想的である。両アーティストとも馴染みが薄いが、今後とも楽しみ。10月19日朝8:31~約44分間。
205. フランソワが乗り々フランス風、ドビュッシー・こどもの領分:即興風あるいは随筆風の小品からなるピアノ組曲で、各々趣向が異なり飽きない。演奏は見掛けより難しく、終曲「 ゴリウォーグ…」を除いて平板になり易いが、流石、往年の名手サンソン・フランソワは存分に持ち前の感性を活かししっかりまとめている。緩急、テンポが巧いし、タッチも深い、フランスの香高い好演。日頃気分屋の彼だが、これには乗り々で良かった。1968~9年の録音。10月22日朝7:26~約20分間。なおこの後すぐ放送の同「ピアノのために」も悪くない。