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過去の掲載記事(43)

211. ウィンナワルツならレハールが一番か、「金と銀」ほか:「ウィンナワルツ」と言えばJ.シュトラウス作がポピュラーで当時のワルツブームを牽引したが、一部を除いて在り来たりの感を否めずやがて下火になった。その後レハールの登場とともにブームは再燃、ウィンナワルツの第2期黄金時代を迎えたわけだが、流石に前者より凝っていて気品がある。「金と銀」と「メリー・ウィドー」はフランス風でもあり、フランツ・バウアー・トイスル指揮ウィーンフォルクスオーパー管弦楽団はこなれた演奏を披露。管弦楽の小品にはウィンナワルツに限らず数々の親しみ易い名品がある。チャールズ・グローヴズ指揮フィルハーモニア管弦楽団による6曲は運動会でお馴染みのものを含めいずれも親しみ易いが、マリ作「金婚式」とイェッセル作「おもちゃの兵隊の観兵式」が曲、演奏ともに乗りに乗っていて、優雅で佳い。その他4曲はアイレンベルク作「森の水車」、ベートーヴェン作「トルコ行進曲」、ネッケ作「クシコスの郵便馬車」、ピエルネ作「鉛の兵隊の行進曲」。2022年1月21日朝8:30~約45分間。

212. アマーデウス奏団の熱演、ドボルザーク「アメリカ」:ドボルザークの室内楽ならばこの弦楽四重奏曲が最右翼で、「アメリカ」とは言え、ボヘミヤ風の郷愁を誘う彼の代表作。濃厚な郷土色から好き嫌いはあろうが、個性的で、いずれの楽章も退屈させない。ポピュラーな人気曲だけに演奏は数限り無いが、アマーデウス四重奏団の熱演は注目に値する。特に第2楽章がそれで、情熱を傾け、情緒豊かに切々と歌っている。他楽章も味わい深く上々の出来。粒揃いのメンバーならではのハーモニーが光る。2月8日朝8:45~約30分間。

213. アンデルジェフスキによるモーツァルトのピアノ協奏曲 第17:彼のピアノ協奏曲としては今一歩だが、他者の真似できないメロディーとパッセージを駆使した魅力作に変わりない。演奏は中間楽章など緩徐部が鍵であり、凡演になりかねないが、ピョートル・アンデルジェフスキ(ピアノ&指揮)/スコットランド室内管弦楽団は脚本が緻密、コントラストが効いていて奥行が感ぜられる。馴染みのないオケだが、ソロが指揮も執ったのが効を奏した成功例と言える。高精度の音質の賜物かオケは張としなやかさが特徴の、ソロはクッキリと美しい好演である。2月18日朝8:08~約37分間。

214. 結構聴かせるグリモー/サロネン、シューマンのピアノ協奏曲:彼の代表的名作かつピアノ協奏曲中屈指の名作として、グリーグのとのカップリングでLP時代以来広く親しまれているが、名盤に恵まれない。わずかLP初期のハスキル/オッテルロー指揮ハーグフィルまで遡らなければならない。あの情熱のほとばしる躍動的なパッセージが忘れられない。幻想的であるべしとする既成観念に囚われない個性的な名演である。その足元にも及ばないながら、エレーヌ・グリモー/エサ・ペッカ・サロネン指揮ドレスデン国立管弦楽団の演奏はなかなか聴かせる。ソロはナチュラルだが、重点をしっかり押さえ、味もある。オケはソロを巧く盛り上げ、卒がない。多くの演奏が第1楽章などコクを求めてのったり、くったりして鈍いのと対照的である。2月22日朝8:38~約37分間。同様に好音質の好演として、多少古株だがリンパニー/シルヴェストリ指揮/ロイヤルフィル盤を揚げて置く。

215. シューベルトの随筆風、粋なソナタⅮ664、ピレシュの好演:彼の幾多ものしたピアノソナタの中、規模は小さくとも最も歌心を効かせた彼らしい快作、ベートーヴェンを意識したか構造を重視し肩ひじ張って冗長な他のソナタに比べ、粋な風情があって好ましい。演奏は得てして気楽、軽快に終始し勝ちだが、マリア・ジョアン・ピレシュのそれには血の通った温もりそして強弱、テンポへの微妙な気配りが感じられる。2004年5月の収録。

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