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過去の掲載記事(44)

216. ラフマニノフのピアノ協奏曲 第2、ルビンシュタインが飛躍:ムーディーでロマンチックな名曲として広く親しまれてはいるが、鈍く、温水で薄めたような生ぬるさを感じるのは私ばかりではなかろう。そうしたどろどろした水っぽい演奏が多い中、アルトゥール・ルビンシュタイン/ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団はラテン風の精彩を放つリッチな好演を披露。当時「黄金の響き」と称された取って置きの絢爛豪華な音響が曲の澱みを晴らし、ソロは綺麗のみならず、適宜メリハリを付けてムードを巧みにコントロール。日頃そつの無いルビンシュタインだが、今回一皮も二皮も剥け飛躍した。3月23日朝7:32~約39分間。

217.「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、小澤征爾が好タクト:クラシック音楽ファンならずとも一度は耳にしたことのあるポピュラーなモーツァルトの名作。しかし闊達、明快なだけの無造作な凡演があまりに多い。その点小澤征爾はこの曲が如何にも好きそうにサイトウ・キネンオーケストラをみずみずしく、エレガントに響かせる。一糸乱れず艶やかに美しく、強弱、テンポも微妙によく統制の効いた稀に見る好演である。フェスティバルでのライヴとは思えない厚みのある好音質も見逃せない。3月30日朝8:16~約22分間。

218.  ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲、幻想的な名作、濃厚な力演:「アラビアンナイト」を想い起こさせる幻想的な名作、適度に洗練されているのでローカルの臭みを感じさせない。3楽章のいずれも変化、起伏に富んでいて飽きない。そうした彼の代表作であるが、それほどポピュラーではなく、かなり古いがモーラ・リンパニー/アナトーリ・フィストゥラーリ指揮ロンドンフィルハーモニー管弦楽団が彫の深い強烈な演奏を披露していた。ソロは女流ながら男勝り、オケはえぐる様に説得力旺盛、両者ともよく曲想をとらえた濃厚な力演である。しかし音質がどうか、良ければピカイチの名盤と言えよう。4月17日朝9:02~約38分間。

219.  ヴラド・ペルルミュテールの妙演、ピカイチのラヴェル: 先日(5月8日、10日)放送されたペルルミュテールの妙演ですが、流石ラヴェル弾きとして名高いのが頷けます。殊に彼がラヴェルの小品全集を2回目となる1973年に入れた盤は腕の衰えをほとんど感じさせず見事でした。好音質がもたらす真珠のように艶やかな音色も特筆すべき事、珠玉の名盤です。久々に聴いて感動を新たにした次第。とりわけ「クープランの墓」は自然で柔和な中に詩情がいっぱい、これに勝る演奏は想像出来ない位素晴らしかった。ほぼ同時期にやはりラヴェルの全集を出したジャック・フェヴリエも好演、好音質でしたが、ここまで良かったかどうか。フォーレの「主題と変奏」op.73もしかりだが、全体を通して真摯に優しく聴き手の心に沁み入る力演とも言える。そうしたペルルミュテールの遺産は誠に大きい、彼のお陰でラヴェルの真価が実感できます。

220.  このグレン・グールドは見事、バッハ「ゴールトベルク変奏曲」:多数の小品を連ねとてつもなく長い印象で、大抵は聴いているうちに飽きて来て眠たくなる。往年の妙手ランドフスカならともかく、有意義に弾くのは至難である。この簡単そうに見えて意外な難曲をグレン・グールドは複数録音しており、1959年モーツァルテウム大ホールでのライヴは見事である(モノラル録音)。曲の有機的な繋がり、流れを意識したようなきめ細やかなテンポ、強弱付け、ほど良い情感と滋味、とにかく退屈させない名演である。

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