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226.「すごい」の一言、ミュンシュ/フランス国立のブラ2:ブラームスの4つの交響曲の中最も穏やかなので演奏は平板になり勝ちだが、シャルル・ミュンシュ指揮フランス国立管弦楽団のそれは「すごい」の一言に尽きる。彼の主張を前面に押し出した説得力のあるメリハリを効かした力演である。殊に第2、第4楽章は研ぎ澄まされたセンスが遺憾なく発揮され素晴らしい。またライヴのせいか思う存分響かせ聴き手の情感に切々と訴えている。ただ音質の良くないのが残念。1965年当時のライヴ録音はまだまだつたなかった。7月15日朝8:32~約43分間。
227. 美しく艶やか、ジャッド/イギリス室内のチャイコ・セレナード:セレナードはメロディーの美しさが作曲の鍵であり、弦の美しさが演奏の鍵である。チャイコフスキーのそれもメロディーの美しさが随所に楽しめ、弦の魅力を十分に引き出している。中でも中間2楽章が良い。ただ演奏は大袈裟、鈍重にならないよう制御が肝要で、ややもするとチャイコの臭みに繋がる。一方ジェームズ・ジャッド/イギリス室内管弦楽団の演奏はあっさりしている向きもあるが、美しく艶やかで細やかな情感に包まれ快適。8月4日14:02~約36分間。
228. かなりこなれ磨きの掛かった好演、シュタインバッハー/島田:ドボルザークの4つのロマンチックな小品、ドビュッシーのヴァイオリンソナタとブラームスのヴァイオリンソナタNo.2、いずれも好アンサンブルを聴かせてくれた。ヴァイオリンのアラベラ・美歩・シュタインバッハーとピアノの島田彩乃、両人とも馴染みのないアーティストだが、かなりこなれ磨きが掛かっている。シュタインバッハーは優美で歌心、気品と弾性があり魅力的、島田は曲想をよく捉え、テンポと強弱が微妙、アンサンブルに深みと厚みを加えた(2021年6月7日 王子ホール)。8月15日19:30~20:55。
229. ラトル/ベルリンフィルが堂々劇的に表現、ブラ3:ブラームスの他の交響曲と比べ同じく重厚だが、最も渋くグレイッシュ。そんな曲想をサイモン・ラトル/ベルリンフィルハーモニー管弦楽団はコントラストを際立たせ劇的に表現している。締りが甘く曖昧な箇所はあるが、名門オーケストラらしく堂々としていて、ブラームス特有の深い味わいを醸し出している。好演が乏しい中一聴に値する(2008年の録音)。8月20日朝5:05~約45分間。
230. 標準を超えたノイマン/チェコフィル、ドボルザークの「新世界」:交響曲の名作中の名作、クラシック音楽ファンならずとも一度は耳にしたことがあろう。それだけに幾多の盤で溢れているが、全4楽章とも満足に聴けるものはそうない。ヴァーツラフ・ノイマン/チェコフィルハーモニー管弦楽団の演奏もオーソドックスで満足ではないが、緻密かつ第2楽章など緩徐部では郷愁を切々そそり、他楽章では金管が高らか、さわやかにして弦共々清新、強靭、高弾性を発揮している。すなわち全楽章とも遜色なく、標準を超えて楽しめるので、他盤を評価する基準になり得る。8月25日朝8:20~約44分間。