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231. 小林美樹/坂野伊都子による熱演、ヴィターリのシャコンヌほか:ヴァイオリンの小林美樹とピアノの坂野伊都子による熱演、ヘンデルのヴァイオリンソナタNo.4、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタNo.5「春」」とヴィターリ?のシャコンヌ。小林は未熟ながら真摯、聴き手の心に沁み入り情熱的、特に当シャコンヌは碌な演奏がない中可憐によく弾いている。坂野は調和に長け、卒がない。(2020.12.4.武蔵野市民文化会館)。9月2日19:30~21:06。今後アンサンンブルに艶と深みが付き脂が乗って来よう、期待している。
232. リヒテルならば聴ける、ベートーヴェンのディアベリ変奏曲:彼最後期の長大ピアノ曲。音楽の神髄を求めて装飾を一切排し、感情を超えた悟りの境地を思わせる。しかし淡々と弾かれてしまうと長く退屈で何ら魅力が感じられないから難しい。スヴャトスラフ・リヒテルならばどうか、風格、深いタッチ、スケールの大きさ、流石である。ごつくて、こわ面なところもあるが、いかにもベートーヴェンらしいし、陰影、コントラストが効いていて思わず惹き込まれる。1986年のライヴだが好音質。9月16日朝8:20~約54分間。
233. これならば納得できるシューマンの弦楽四重奏曲第3:ブラームスと同様彼の弦楽四重奏曲は概して地味でとっつきにくい。曲想を的確に表現できるか弾き手に掛かっており、納得できる演奏がなかなか見当たらない中、新鋭のパーカー四重奏団は結構聴かせてくれた(‘22年3月米国でのライヴ)。各メンバーともレベルが高く、均質、バランスがとれていてよくハモる、新鮮、緻密、血が通っている。その前に弾いたバッハもほのかな抒情を帯びたしっかりしたもの(フーガの技法から「反進行による拡大カノン」)、キム・カシュカシャン(Vla.)の加わったドボルザークの弦楽五重奏曲 op.97・第3楽章(CD)も結構な好演だった。9月14日の「ベストオブクラシック」にて。これからが楽しみな奏団だ。
234. タッキーノ/プレートルによる快演、プーランクの「朝の歌」:フランスの色とりどりのエスプリが凝縮した、一面ユーモラスな彼独特の準名作。これをガブリエル・タッキーノ(ピアノ)が深い打鍵で色濃く表現、ジョルジュ・プレートル/パリ音楽院管弦楽団も巧みにフォロー、洒脱でプーランクの真骨頂を披露、快演である。9月28日14:01~約25分間。なおこの裏面に入っている同時期の収録であろう同じくプーランクのピアノ協奏曲も快調である。
235. バティアシュヴィリが熱演、ムード満点のショーソン「詩曲」:彼の代表作に留まらずオケを伴うヴァイオリンの言わば幻想曲の名作中の名作。しかしかのジネット・ヌヴーによる名盤(ドブローウェン/フィルハーモニア)がいつまでも耳に残る位その後満足な演奏に出会えない。とは言え稀に魅 せられることがあり、リサ・バティアシュヴィリのヴァイオリン、ヤニック・ネゼ・セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏は一聴に値する。ソロは線が細めだが、曲の進行とともに殊に後半熱が入って来て惹き込まれる。オケは流石一流とあって、かつて言われ今も健在の「黄金の響き」が風格今一のソロをカバーしムードを盛り上げている。9月30日朝8:50~約24分間。