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236. ベーレントが見事、ギターの腕の見せ処アランフェス協奏曲:ロドリーゴと言えばこの曲、それも第2楽章がギターの名作中の名作であり彼の存在価値を高めた。ロマンチックで美しく快適、ギタリストにとっては腕の見せ処、テクニックのみならず艶、まろやかさそして腰の強さも合わせ問われる。これらの要件をジークフリート・ベーレントは見事こなしており、聴き応えがある。オケのラインハルト・ペータース/ベルリンフィルも肝腎の木管がくっきり浮き立ち郷愁を誘う。ただ1966年の収録なので音質は今一つ。10月23日。
237. 色彩感抜群、ライナーによるバルトークの管弦楽協奏曲:管弦各パートが次々と主役を演ずる豪華な彼の代表作。色々な楽器が突出しても一つの曲想にまとめ上げているところがバルトークの真骨頂と言える。演奏も率直なだけではバラバラな印象に終始するので工夫を要するが、フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団のそれは精緻かつ立体的で色彩感が抜群。各パートの高い精度、上質な音色と響きをもたらしたライナーの熱意が伝わってくる達演である。収録年度はかなりさかのぼると思われるが、音質が最近のものと遜色なく技師達の奮闘も見逃せない。10月27日朝8:33~約42分間。
238. 隠れた快作、妙演のドヴィエンヌ・四管の協奏交響曲第2:知る人ぞ知る隠れた快作、管の奏者にとっては嬉しく華々しい晴れ舞台、聴き手にとってもその流暢で上品な調べは快適、貴重である。各ソロの絡まりの妙技が聴き処だが、エマニュエル・パユのフルート、フランソワ・ルルーのオーボエ、ラドヴァン・ヴラトコヴィチのホルン、ジルベール・オダンのバソン、ミュンヘン室内管弦楽団指揮ダニエ ル・ギグルベルガーの演奏はオーボエを筆頭に粒揃い、きらめいていて色鮮やかそして和やか、オケもソロとの調和が自然で巧い。特に第2楽章以降が曲、演奏ともに良い。11月18日朝8:17~約29分間。
239. モーツァルトの交響曲No.31「パリ」が名作に聞こえた名演:軽妙なだけで風格に欠ける、若年モーツァルトとしては仕方のない所謂佳作だが、演奏次第で彼後年の作に引けを取らない名作に聞こえる。例えばリッカルド・ムーティ/ウィーンフィルで、ヴァイオリンをはじめとする美しい弦と立体的によく通る管共々一糸乱れずエレガントに奏でている。ムーティのハイセンスと優れた統率力の賜物、ウィーンフィルの真骨頂を見事に引き出した名演である。1993年の収録、細緻な録音による成果でもある。曲、演奏とも特に中間楽章が良い。11月19日放送。
240. 情感、情熱の籠った好演、ドボルザーク・ピアノ五重奏曲op.81:彼の室内楽と言えば弦楽四重奏曲「アメリカ」はお馴染みだが、それを凌ぐ代表作がこの曲、メロディアスで抒情的のみならず厚みとスケールがある。第1,2をはじめ全楽章とも揃って楽しめ、ローカル色があまり気にならないのも良い。演奏には気が利くソロとそれに負けないしっかりした弦が肝要だが、ルドルフ・ブフビンダー/アルバンベルク弦楽四重奏団は双方のバランス、ハーモニーが宜しい。ヴァイオリンがややか細く、チェロがややひ弱ながら情感、情熱の籠った繊細かつ質感充分の好演である。1993年ウィーンでのライヴ、録音も良い。11月29日朝7:26~約44分間。