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241. 強靭なポリーニに打って付け、ブラームスのピアノ協奏曲第1:純ドイツ風の渋く重厚で絶大な名作、腰のしっかりしたソロと機動力の効いたオケが演奏の要となる。マウリツィオ・ポリーニとベルリンフィルならば期待が膨らむところ、ポリーニはいつも通り高剛性、高弾性、強弱とテンポも的確。一方クラウディオ・アバドは鈍くすっきりしない。ライヴ(1997年於ウィーン)のせいか、雑音がないのは幸いだが、オケの解像が甘い。録音に恵まれずアバドには不幸だったが、ポリーニの活躍が光りAクラスに入る 。12月9日朝8:24~約49分間。ポリーニはこの曲を初回1979年カール・ベーム/ウィーンフィルと録っているが、風格と風趣は今一でも勢い、迫力が目覚ましく、ベームも迫力と起伏が凄い。若きブラームスを想わせる名演である。
242. 世紀を超えた絶品、クライスラーの弾くベートーヴェンの協奏曲:フリッツ・クライスラーはヴァイオリンを通じてクラシック音楽の素晴らしさを全世界に最初に知らしめた一人、日本でも大正末から昭和のはじめ一部ファンが出立ての海外SP盤で彼の演奏に驚喜して以来ティボーとともに掛け替えのない存在になった。そうした彼の真価を満喫するには小品よりも協奏曲、特にベートーヴェンのそれ(レオ・ブレッヒ指揮ベルリン国立オペラ)は世紀を超えて絶品である。人間味溢れる、色彩感、情感豊かな彼の残した至宝の一枚、いやSP盤数枚であり、その中たまたま我が家にあった一枚を私は幼い頃ボロ蓄音機で慈しみ聴いたものだ。それが思いがけなく12月8日NHKFMで聴け大層感動した。針音の優しいのも昔聴いたそのままで、最後の一枚を除いて保存状態も良かったようだ。
243. アカペラ切っての名作、プーランク「Xマスの四つのモテット」:純フランス風の洒落、洒脱を極めた彼らしく垢抜けした清美な名作、ジーンと心に沁みて来る。アカペラの合唱曲の最高峰でなかろうか。クリスマスに限った曲想ではないので、普段もっとポピュラーに歌われたらと思う。マルクス・クリード指揮ベルリンリアス室内合唱団の演奏にて12月23日朝8:34~約14分間。ハーモニーの効いたきめ細やかな仕上がりでとても綺麗、心が洗われるようだ。なおこの後「愛の小径」、フォーレの「夢の後に」をはじめフランス歌曲の数々も聴かれ、エスプリに浸れる。ソプラノのヴェロニク・ジャンスは癖がなく聴き易い。
244. 練度の高い秀演、タカーチQのボロディン・弦楽四重奏曲第2:この分野で最もロマンチックな彼の代表作、全4楽章夫々に異色の味わいが楽しめるが、国民楽派と言われる程のローカル臭はなくごく自然で良い。そんな名作だけによく弾かれるが、聴く度に不満を覚える、貧相だったり、大雑把だったり。その点タカーチ弦楽四重奏団のそれは先ず緻密、表現力が豊かそしてヴァイオリンは部分的に線が細いが、各メンバーとも音色が締まって優美だ。血の通った練度の高い秀演である。12月27日朝8:13~約28分間。
245. 思わずうっとり、シュポーアのVnとHpのソナタop.16:ハープ奏者にとっては貴重なレパートリーでも一般には馴染みの薄い曲、深みも厚みもないが、特に前2つの楽章はメロディーが極めて美しく、デュオの微妙なやりとりが何とも心地よい。もっとも演奏が良ければの話で、ヨセフ・スークのヴァイオリン、ダグマル・プラティロヴァ―のハープは意気の合った好演を聴かせてくれうっとりさせられる。感じの良いだけで物足りなかったスークが何時になく歌心を効かせしっかり踏み込んでおり、ハープもそれに応えて浮き出るように晴れやかに艶やかに奏でている。まさしく隠れた曲に日が当たりシュポーアにとっても幸いである。12月29日朝8:46~約27分間。なお彼の同ソナタop.114は更に磨きがかかっており名作だ。