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過去の掲載記事(51)

251. ケンプが丹念、緻密に紡ぎ上げた「ハンマークラヴィーア」:ベートーヴェン後期の長大ピアノソナタ。第1、2楽章はお馴染みかもしれないが、残り2楽章は地味で色彩感がないので並みの演奏ならば退屈でしかない。その後半楽章も有意義に弾くのが、流石ドイツものを得意とするヴィルヘルム・ケンプだ。丹念、緻密に紡ぎ上げることにより壮年ベートーヴェンの枯淡な時として張り詰めた心境を見事表出している。1964年の収録と思われるが、好音質かつまだ々活発、元気な頃のケンプの代表的好演である。2月1日朝7:41~約41分間。

252. ムターが次第に乗り気、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4:彼若年の作故か深み、充実感はないが、メロディアスでエレガント、快適な造り。従って演奏も快適にのみ終始する、誠意のない凡演になり勝ち。アンネ・ゾフィー・ムターならばどうか、冒頭からしばらくは標準並で期待を削がれたが、その後彼女乗って来てボーイングが次第に深くなり、第2楽章では懇切丁寧にじっくり踏み込み、終楽章も可憐、華やか、エレガントに仕上げている。重ね々看板の第1楽章が一皮剥けて欲しかった。彼女が指揮したロンドンフィルもソロとの調和宜しく先ず々。2月10日朝8:01~約26分間。なお典雅、精緻なオークレールとクーロー/シュツットガルトフィルによる妙演は第5番「トルコ風」と共に今以って記録的。

253. モーツァルトを思わせる名曲、アリアーガの弦楽四重奏曲ニ短調:スペイン風がほのかに香る、美しいメロディーの沸き立つ名曲、そのムードからモーツァルトを思わせる。全4楽章とも上々の作だが、中でも両端楽章が出色である。しかし聴ける機会、盤が稀なので演奏の出来不出来を問うていられないのが現状。ガルネリ四重奏団の演奏も聴けるだけでありがたく一通り楽しめるのだが、強いて言えばのっぺりした第1楽章をはじめ全体的に今一つ締って欲しかった。2月12日「名演奏ライブラリー」にて。なお幸いかなり古いがスペイン国立放送クラシコによる若々しく明晰、細緻、好音質の名盤がある。

254. カンタータの名作、バッハの第199番「わが心は血の海に漂う」:レチタティーボが通り一遍の定型ではなくメロディアスなのと全曲ソプラノが歌う点でバッハとしては珍しい造りである。彼のカンタータには頻繁だった宗教行事に間に合わせようと似た曲が多い中熱の籠った貴重な一作である。従って演奏には情熱と血潮が欠かせず、ソプラノのエディット・マティスは期待に応え力強く切々と歌い抜き、オケは血が通ってソロを包むように暖かい。流石カール・リヒター率いるミュンヘン・バッハ管弦楽団、昨今の古楽器による華奢なオケとは違う豪華な響きも懐かしいし、オーボエが悲痛で印象的。3月28日朝8:01~約30分間。

255. エスプリ香る、洒落た快作、プーランクの八つのノクターン:ノクターンならば先ずショパンに名曲が多いが、フォーレ作はともかく、プーランクも小味の効いた詩的な作品を数少ないながら遺している。随所にエスプリが香り、洒落ている。ノクターンとは思えないアクセントの強い、速い曲も含まれ異風だ。アレクサンドル・タローの演奏、名人芸までは今一つだが、懇切丁寧で優美、情感一入。4月13日朝9:03~約19分間。

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