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261. 極め付きの秀演、デ・ヴィートのブラームス・ヴァイオリンソナタ:デ・ヴィートはヌヴーとともにSP最後期~LP初期に活躍した世界を代表する女流ヴァイオリニストで、ヌヴー亡き後の空白をすっかりカバーして余りある。それでもレパートリーは極狭く、完璧さをストイックに追い求めとことん弾き切った上での収録なので残された盤はそう多くない。それだけに概して逸品揃い、彼女の真骨頂であるがルビーの如く輝き、大なり小なり歌謡的である。その中の至宝とも言えるのがブラームスのソナタ第1と第3番で名匠 エトヴィン・フィッシャーの絶妙なフォローの下息を飲むほど気高く可憐、エレガントな秀演を聴かせてくれる。フィッシャーの強弱、間拍子のずば抜けたセンスの賜物でもある。後にも先にもこれを凌駕する演奏はよもやあるまい。この中の第3番が5月21日朝9:12~約26分間。なおティト・アプレアとの第2番も素晴らしいし、他の曲も準~好演なので当朝9:00~115分間通して聴かれたら猶良い。
262. オーマンディならでは、レスピーギ「教会のステンドグラス」:「ローマの松」など他の管弦楽が情景描写らしく単調、平板なのに対し変幻自在、色取り々の特異曲。あらゆる楽器を動員し各器の持ち味を巧く活かしており、中でも鐘、銅鑼、オルガンが効果的。哀愁、寂寥感をそそる第1曲をはじめ華々しくも幻想的、神秘的である。演奏はオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団に打って付け、元々豪華絢爛で劇的、各パートとも活き活き有機的かつ統一感、立体感一入。6月14日朝9:22~約28分間。
263. ヘルマンによる超自然ながら味わい深いバッハ・イタリア協奏曲:「協奏曲」とは1人 ないし複数のソロとバックの奏者群によるのが普通だが、バッハのそれには鍵盤楽器1台で演奏するものが結構多く、その代表作がこの曲、いかにもバッハらしい第1楽章はお馴染みかもしれない。一方名曲なだけに幾多録音があるが、魅力的な演奏は稀、概して機械的な弾きっ放しに陥り易い。コルネリア・ヘルマンのピアノ演奏も力まず超自然なのだが、随所細やかにニュアンスを醸し味わい深い。殊に中間楽章が出色で得難い。チェンバロも名器ならばともかくピアノの方が艶やかで表現力があり向いているかもしれない。6月29日朝8:03~約15分間。
264. ゴージャスなオーマンディ/フィラデルフィア、チャイコ第4:内容はともかく表面的には金管が大いに活躍する派手な交響曲、気晴らしにも、オーディオ愛好家にも絶好のソースである。従って演奏は少なくともリッチであって欲しいが、その点ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団は有力候補に挙がる。実際に聴いてみるとポッテリしてメリハリが今一な部分もあるが、何と言ってもゴージャスな響きが相変わらずで大きな魅力、オーマンディの音造りが光っている。7月13日朝9:01~約49分間。名盤はムラヴィンスキー/レニングラードフィル、メリハリ、抒情性共に備え、充実している。
265. 絶妙な厚みのある好演、ショパンのチェロソナタop.65:チェロ、ピアノとも主役を演じ双方巧くからみ合う彼後期の力作、造りが複雑な難曲なので並みの演奏では曲の真価を味わえない。従って毎回宝くじを引く思いで聴くのだが、ブリュノ・ドルプレール(チェロ) とナタナエル・グーアン(ピアノ)なるアーティストには馴染みがないのに大当たり、絶妙な厚みのある熱の籠った好アンサンブルを繰り広げる。特にピアノのセンスが光っていて、的確、チェロ共々思わず惹き込まれる。その他プーランクのチェロソナタも弾いているが、結構彫が深く捨て難い(23年3月8日ライヴ、浜離宮朝日ホール)。7月7日放送の「ベストオブクラシック」にて。