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過去の掲載記事(55)

271. ウィーン風の上質な音造り、ウィーンQによる「不協和音」:かの愛称で呼ばれる位有名なモーツァルトの弦楽四重奏曲ながら常々しっくり来なかった。しかしこれまで凡演ばかり聴かされていたという訳か、ウィーン四重奏団の演奏に出会って曲のイメージが一新し、その真価にやっと触れることが出来た。ウィーン風の上質な音造り、厚み、滋味、温かみ、自然で美しいハーモニーによって惹き込まれ聴き入った。曲を生かすも殺すも演奏次第、アーティストの力量に敏感な難曲と言えそう。9月7日朝8:34~約33分間。

272. グリュミオー/ハスキルの名演、ヴァイオリンソナタK.301:モーツァルトの名宝同K.304に次いで傑作の当曲、深みは今一つだがメロディーがひと際美しく、輝いている。この演奏には豊潤、華やかな音色のアルテュール・グリュミオーが向いていて、幸いクララ・ハスキルとの名盤がある。グリュミオーはそうした彼の持ち味を活かして名曲想をくっきり描き出しており、ハスキルは磨き抜かれた絶妙なタッチで滑らかに艶やかに、双方とも気品に満ちた香高い名演を披露。殊に第2楽章の中間部はしっとり哀愁を帯びていてこたえられない。ステレオ初期の収録ながら好音質なのも嬉しい。9月2日放送の「音楽の泉」にて。

273. クーベリックがエレガントに、モーツァルトの交響曲第36番:この「リンツ」は彼の39番、40番と比べれば佳作程度の出来とは言え、演奏次第で魅力が倍加するのはやはり曲造りの巧さ故のこと。ラファエル・クーベリックは常々端正でムーディーだが、この曲もその真骨頂を活かしエレガントに仕上げた。殊にヴァイオリンをはじめ弦の穂先が揃って美しく正にウィーンスタイルの、快適で後味も良い、バイエルン放送交響楽団を率いた好演だ。大分前の収録と思われるが、解像度が高く録音芸術の華を感じる。9月27日朝8:15~約30分間。

274. アマデウスQがまずまず、モーツァルトの弦楽四重奏曲K.421:弦楽四重奏曲ならばベートーヴェンと並んでモーツァルト、それもニ短調K.421であろう。名旋律に彩られた可憐、情熱的な陰影の漂う室内楽の名宝である。しかし同時に難曲でもあり名演奏にはなかなか恵まれず、ピカイチとなるとSP時代のレナーQやフロンザリーQまで遡らなければならない。LP以降は奮わない中アマデウス四重奏団がまずまず、オーソドックスながら曲想をしっかり捉え、各メンバーのバランス、ハーモニーとも良好、一通り聴ける。取り分け白眉の終楽章が活き活きした熱演で何より。9月28日朝8:02~約26分間。最近ではゲヴァントハウスQによるライヴ(2014年於大阪)がメリハリを効かせ、エレガントで良かった。CD化が待たれる。

275. 宮田大がコクを出しながら垢抜け、ラフマニノフのチェロソナタ:彼らしい独特のコクのある異色作、しかし演奏次第でコクは臭みに変わり濁り曇る。その点チェロの宮田大は澱みにはまらず、深く伸びやかエレガントに歌っており、コクを出しながらも垢抜けしている。ピアノのジュリアン・ジェルネも宮田を巧く盛り上げる一方、メリハリを効かせ曲の臭みを克服、両者一体化している。2022年の録音。10月6日朝9:10~約39分間。

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