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276. 貴重な録音、ボアエルデュのヴァイオリンとハープのソナタ変ホ長:彼は作曲の多いオペラよりむしろ唯一のハープ協奏曲で知られる。なるほど一角の名作であり、ハープに造詣が深いのか、このヴァイオリンを伴う小品もなかなかの出来で嬉しい。第1楽章はモーツァルトを思わせるようにメロディアス、次楽章もそうだが変奏を繰り広げ凝った造り。しかし録音は少なく聴く機会は稀で、かつてのベテラン、ユーディ・メニューイン/ニカノール・サバレタによる録音は貴重である。ヴァイオリンはややひ弱だが、両者が心を通わせ慈しむヒューマニスティックな好演、古典のあでやかさ、気品もある。10月1日放送の「名演奏ライブラリー」にて。

277. 稀に見るオーボエ協奏曲の傑作、R.シュトラウスのニ長調:彼の代表作であると同時にオーボエ協奏曲としてはバロックのアルビノーニやマルチェルロ作以来稀に見る傑作。澄み渡る様な青空の下美しい楽園で遊び幸せの極致に浸っている様で、力みや臭み等一切ない垢抜けした名曲、オーボエの特長がよく活かされている。さてフランソワ・ルルーのオーボエ、ダニエル・ハーディング/スウェーデン放送交響楽団の演奏だが、ソロはのびやか、華やいでいて抒情的な好演の一方、バックは押し出し不足、しかしソロによくマッチしていてムーディー。11月4日放送の「音楽の泉」にて。

278. ジャック・ティボーは無類の天才、改めて感動:演奏はやはり素晴らしかった。フランクのそしてドビュッシーのソナタ、双方ともアルフレッド・コルトーとの共演で、殊にフランクでは第2楽章が洒脱、第3楽章はじっくり深く気高いし、ドビュッシーは本場フランスの香り豊か。カザルスが加わったシューマンのピアノ三重奏曲第1番も従来のイメージを一新する、名曲に聞こえる程の秀演である。緊密で迫力あり垢抜けしている。まさに世紀の逸材揃いならではのこと。その他数々の小品でも可憐で滋味深くまるで肉声のように血が通って温かい。すなわち音質は意外に悪くないが、やはり針音を和らげる為か部分的にヴァイオリンの高音不足が否めない。直に聴けた大先輩達が羨ましい。11月26日放送の「名演奏ライブラリー」にて。

279. 極度に洗練された秀演、ラフマニノフのチェロソナタト短調:コクは彼の曲造りに欠かせないものだが、ややもすると彼独特の臭みに繋がり評価を落としてしまう。この曲もその一つだが、演奏次第で大いに挽回できることも確かで、ミッシャ・マイスキー(チェロ)/セルジオ・ティエンポ(ピアノ)の演奏は強弱とテンポが常識を超え天衣無縫、極度に洗練されている。コクはあれど臭みが抜けベストに近い。殊に得てして退屈な後半2楽章が見違える程熱の籠った秀演で、全楽章を通じて名曲にランクアップされてよい。こ度の成功はピアノにあり、その特異的なセンスがチェロにも伝播したようだ。2005年スイスでのライヴ。2024年1月4日朝8:40~約33分間。

280. 歌心の熱い力演、R・シュトラウスのヴァイオリンソナタ:ピアノがヴァイオリンと独自のメロディーで絡み合う難曲、ロマンチックで躍動的、全3楽章それぞれ異なる美点を有する魅力作である。中でも第2楽章は和やかながら沁み々心を打ち印象的。ヴァイオリンのヴォルフガング・シュナイダーハンは線が細く風格こそ乏しいが歌心の熱い、気迫の籠った力演、ピアノのワルター・クリーンも何時になく精彩を放ち巧妙、好アンサンブルを繰り広げる。1月18日朝8:19~約29分間。

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