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281. ウィーンスタイルの好演、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第5:「皇帝」と名付けられる位彼の5つのピアノ協奏曲中最も威風堂々としているが、一方馬鹿々しいと思われかねない。しかしエレガントな好演であれば結構魅力的で、フリードリヒ・グルダ/ホルスト・シュタイン指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏はその一つ。剛腕ではないが聞かせ処はしっかり押さえ、でも気心の優しいソロそして壮大、闊達なオケ、流石一流の上質な響き、双方合わせてウィーンスタイルの好演に仕上がった。高い録音精度も一役買っている。1月18日朝9:06~約43分間。

282. チャイコフスキー「くるみ割り人形」に目が開いた:ロマン派劇音楽の代表的存在なのだが、双璧とも言えるメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」と比べ印象が薄い。それはありきたりの演奏に慣らされて来たせいかもしれない。と言うのはサイモン・ラトル/ベルリンフィルの好演を聴いて目が開いたからである。元より一流オケなので音響が豪華な上に自然ながら細やかに統率が効き、随所センスの良さが光る。劇場版のため組曲版よりかなり長いので第2幕のみ聴いてよい。組曲版にあるお馴染みの曲も楽しめ、第1幕より面白い。殊にチャイコの管弦楽は貧相なオケや音質が今一では聴くに耐えないが、この盤は録音精度も格別なのでオーディオファンにも通じる一枚。1月23日朝8:31~約76分間。

283. ダイレクトに迫る秀演、ベートーヴェン弦楽四重奏op.59-1:彼中期の力作。ラズモフスキー・シリーズ3曲の中ではあまりメロディアスでないのでとっつきにくい面があるが、特に後半2楽章は渋く充実しており後期作を予感させる。アルバンベルク弦楽四重奏団はやはり期待を裏切らない。この曲も緊密、巧みに陰陽とコントラストを付けて立体感を押し出し、ダイレクトに聴き手に迫って来る。まさしく秀演だ。ラズモフスキー他2曲の演奏も十分期待できる、曲も良いし是非聴きたい。2月6日14:01~約46分間。

284. 東京Qがお見事、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲op.18-3:一風モーツァルトを思わせる初々しい彼の初期作で、流れるようなメロディーの第1楽章が印象的。軽妙な曲だけにプロの演奏であれば程々聴けるが、東京クヮルテットのそれは格別、ソノラスかつエレガント、きめ細かくよくこなれている。音色も瑞々しく艶やかでまさに純ウィーンスタイルの快演である。2月8日朝8:37~約27分間。

285. ブレンデルが色彩豊かに描いた、リストのピアノソナタロ短調:リストと言えば先ず以ってピアノ曲だが、テクニシャンがいくら気張って弾いても聴き手には一向にピンと来ない技巧走った作品が目立つ。一方このソナタもその一つと兼ね々思っていたが、一概にそうとは言えなくなった。アルフレッド・ブレンデルはテクニックを意識さぜずこの曲の多様な特徴を色彩豊かに描いている。リスト特有の嫌味があまり気にならず、きらびやかに美しかったり、神秘的だったり、幻想的だったり、局面に応じて様々的確に奏でている。全体的に濃厚できめ細かい丹精を籠めた力演となっている。従来のイメージを覆し曲の真価を捉えたリストにとって幸いな録音と言える。臨場感のある抜群の音質にも助けられた。2月14日朝8:43~約32分間。

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