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306. アンスネス/シャマユの達演、シューベルト・幻想曲D.940:元々歌謡性に富んだシューベルトそのままにセンチメンタルだが、厚みと言うか重層感も加わる連弾の効果を十分に発揮した準名作である。これ程深みのある連弾曲はそうそう見当たらない。同じ彼の幻想曲ながら「さすらい人」と比べ世俗臭が希薄むしろ枯淡なのも好ましい。情緒的な親しみ易いメロディーからなるので、凡演でも一通り聴けるが、レイフ・オヴェ・アンスネス/ベルトラン・シャマユ は意気のピッタリ合った達演を披露、細部まで血が通い、ムーディーのみならずメリハリもある。ライヴだが高精度の音質も幸いした(2024年6月オーストリア、シュヴァルツェンベルク)。8月20日放送の「ベストオブクラシック」にて。

307. これなら行けるベートーヴェンのピアノソナタNo.31,32:彼の最終3つのソナタ第30~32番はしっかりした骨格とともに、余計なものを一切削ぎ落し、辿った人生を達観したような清閑な境地を感じさせるが、中でも31番は枯淡な味わい深いこのジャンルの最高傑作である。ところがこの31番、LP初期のイヴ・ナットによるいぶし銀のような名盤の他はめぼしいものが無い。もやもやとした散漫な凡演ばかりが目立つ。最近のイゴール・レヴィットの演奏(2023年2月イタリアでのライヴ)もオーソドックスの域を出ず決して満足ではないが、丹精な中に芯があり、コントラストが効いて清閑さが際立つ。32番は聴き手を惹き込む乗りもあり更に良い。殊に終盤はベートーヴェン最後のピアノソナタとしての総決算と感じさせる荘厳な好演だ。8月30日放送の「ベストオブクラシック」にて。

308. 抜群の音響、S.ラトル/ベルリンフィルによるシューベルト第8:彼のベートーヴェン・コンプレックスからか無理やり?図体大きくこさえた感を否めないこの曲、「グレイト交響曲」と言われるだけで内実はパっとせず、空虚とまでは言わないものの印象が薄い。しかしフル規格なので演奏次第でオーディオ効果を存分に発揮できる。サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の演奏がそれで、特段個性など無いのだが、端正、丹念、精緻、とにかく優美だ。流石一流オケによる上質の細やかな音響が楽しめる。勿論立体感、臨場感抜群の好音質の賜物でもある。10月8日朝8:15~約59分間。

309. デュメイ/ピレシュならば先ず々、フランクのヴァイオリンソナタ:彼の代表作でありヴァイオリンソナタの名作中の名作、その陰影のある深奥な片や緊迫感、情熱いっぱいの曲想は比類無く素晴らしい。ところが難曲で名演は乏しく、SP時代のティボー/コルトー盤は別格としてデ・ヴィート/アプレアのLP初期まで遡らねばならない。稀にこれは行けそうと一旦は期待感をそそる演奏もあるが、結局部分的で一貫通して聴けるものはなかなか無い。そうした現状ながらオーギュスタン・デュメイ(Vn.)/マリア・ジョアン・ピレシュ(Pf.)の演奏ならば先ず々だ。取り分けピレシュが見事、テンポ、強弱が何とも微妙。デュメイは小粒ながらピリリ、彼女に引き摺られるように徐々に燃えて行く、情感の籠った熱演。特に第3楽章が上々だが、いずれの楽章も出来、不出来無く楽しめて良い。10月15日朝8:18~約27分間。

310. リストらしくなくて幸い、自身の「詩的で宗教的な調べ」から:「孤独の中の神の祝福」、「死者の追憶」、「葬送曲」と「愛の賛歌」だが、凡そ彼らしくない清純な曲想でびっくり。常々技巧張って皮相的な曲造りには目に余るが、これ等に限って特に前半2曲は彼独特の個性と言うより嫌味が失せ、力みも無く清美そのもの、ほとんど耳にしない曲だけに遅ればせながら見直した。イーゴリ・ニコノーヴィチのピアノは馴染み無いが、この曲に並々ならぬ思い入れがあるらしく一音々くっきり深く踏み込み弾いている。宗教感を抱かせない純粋に美しい奏で方で好感が持てる。好音質も一役買っている。11月13日朝7:47~約48分間。

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