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311. オラトリオの華「メサイア」、絶妙のモンテヴェルディ合唱団:宗教音楽ながらミサ曲等より気楽かつ開放的でくつろげるオラトリオ、ヘンデルは声楽にも通じこの分野でも数々の名作を遺した。中でも「メサイア」はその代表作、メロディアスで色彩感豊か、荘厳な中にほのぼのとした温もりと躍動感があり、まるで全人的な賛歌のようだ。ただ長大なので触りとして「このように主の栄光が現れ」」「主はレビの子孫達を清め」「一人のみどり子が我らのために生まれ」「神に栄光あれ」「神の小羊を見よ」「我らは皆羊のように迷い」「彼は主をたのみとされた」「とこしえの戸よ上がれ」「その声はあまねく世に出て」「ハレルヤコーラス」のみ聴いて良い。いずれも親しみ易く、殊に「ハレルヤコーラス」はお馴染みの傑作である。演奏は数多いが、古楽アンサンブルによるものは概ね拙い中、モンテヴェルディ合唱団/ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツは例外的に良い。特に声部が活き々颯爽としかつ細緻で絶妙。11月14日朝7:28~約32分間。

312. ラローチャならば先ず々、モーツァルトのピアノ協奏曲No.21:彼が遺したピアノ協奏曲の名作群の一角、中間楽章が取り分けロマンチックで映画音楽にもなりお馴染みかもしれない。それ故幾多の録音があるが、案外全楽章通して満足な演奏に出会えない。中間楽章が散漫、表面的だったり、終楽章が特急で雑だったりと難しい。アリシア・デ・ラローチャの演奏もサロン風と言えば聞こえは良いが、モーツァルトを意識し過ぎたのか遠慮気味で踏み込み不足、とても堪能できない。ただ全体を通してバランスは良く、聴かせ処は一通りしっかり熟(こな)している。何よりも楽章による出来不出来の無いのが良い。オケのコリン・デーヴィス/イギリス室内管弦楽団はすっきり、さわやか、ソロと溶け込み好相性、曲想にマッチした快演である。当面この盤で我慢か。11月20日朝8:41~約32分間。

313. ポリーニの立派な達演、モーツァルトのピアノ協奏曲No.21:彼の手掛けた数々のピアノ協奏曲はこのジャンルの宝であり、21番K,467もその宝庫の上位に位置する名曲である。殊に中間緩徐楽章が彼の活躍した古典派時代の一般的作風から抜きん出てロマンチック、現代に通じる感があり印象的。そんな名作ながら演奏となると兼ね々表面的な凡演の山々、やっとモウラ・リンパニーが如何にもモーツァルトらしいエレガントかつ滋味深いソロを披露してくれたのにバックのアルトゥール・ダヴィソン/ヴィルトゥオーシオブイングランドが管の拙さ故不満だったりとなかなか難しい。マウリツィオ・ポリーニのソロと指揮ウィーンフィルの演奏(2005年ウィーンでのライヴ)も満足ではないが、第1楽章の細緻でメリハリの効いたソロ、十分なスローテンポで奏でるオケの美しさが印象的な中間楽章などAクラスに入る好演だ。ただやや速いテンポの技巧張って聞こえる終楽章のソロはもう少し和やか自然であったら、でも一般的には立派なものだ。12月8日放送の「名演奏ライブラリー」にて。

314. フルニエとケンプによる極め付き、ベートーヴェンのソナタ第5:ベートーヴェンのチェロソナタは第3番がメロディアスで親しみ易い名作であるが、他は概して地味で取っ付きにくい。と思いきや演奏次第で見違えるほど変容し準名作にランクアップする。第5番がそれで並みの演奏ではわからないが、内面にベートーヴェンの真価が籠められていたのだ。この彼の真価を引き出してくれたのがピエール・フルニエとヴィルヘルム・ケンプ、気品を湛え格調高く緻密で聴き手の心を揺さぶるフルニエ、深く重厚ながら細緻でエレガントでもあるケンプ、共に一心同体、心温まるヒューマニスティックな妙演を繰り広げる。1965年のライヴながら好音質なのも幸い。同第3番とともに非の打ち所が無い両人の記念盤である。12月16日朝7:49~約23分間。

315. 好印象が好演で倍加したヨーゼフ・ランナーのウィンナワルツ:ウィンナワルツと言えば年始恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでお馴染みのシュトラウス一族のものとの印象だが、聴く機会に恵まれないだけで他にも数々の良品が隠れている。例えばヨーゼフ・ランナーはウィンナワルツ作家の草分けとされるだけであまり目立たないが、彼の「夕べの星」、「ロマンチックな人々」と「シュタイル風舞曲」は結構聴ける。ウィーン弦楽五重奏団による演奏(1992年東京・府中)だが、テンポが粋ばかりか哀愁を帯びこれぞウィーンスタイルと納得させる、優雅でみずみずしい好演だ。殊に印象的なのが「夕べの星」、ヴァイオリン協奏曲かと一瞬勘違いするほど押し出しの効いたヴァイオリンで情感きめ細やかに奮っている。なおこれも演奏機会が稀だが、ヨハン・シュトラウスⅠ世の「ケッテンブリュッケン・ワルツ」も同楽団が沁み々と奏でており好演だ。以上振り返ると、いずれも曲の好印象が好演で倍加したように思える。2025年1月11日放送の「音楽の泉」にて。

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