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316. 細心、聴かせ処がしっかり、クライバー/ウィーンフィルのブラ4:交響曲でよく比較されるベートーヴェンとブラームスだが、好みにもよるが、後者の方が概して練度、深度、色度ともに優れている。他愛ない、時には馬鹿々しくなる前者とは異なり精神性、哲学性を帯び奥深い。殊に最終作の第4番は枯淡、荘厳にして大規模、冒頭楽章の主題など彼独特の精華だ。こうした秀作なので幾多の演奏がある中、カルロス・クライバー指揮ウィーンフィルはオーソドックスの域を出ないが、堂々として頼もしい一方細心に聴かせ処をしっかり押さえている。特に冒頭、幾分スローペースに仕上げた辺り心に迫るものがあり印象的だ。1月27日15:04~約46分間。なお名盤はベイヌム指揮アムステルダムコンセルトヘボーか、より張が効いていて終楽章など辛辣だ。ステレオ最初期の収録ながら音質も上々。

317. ハイティンクが奮っているブラームスの二重協奏曲op.102:彼のヴァイオリン協奏曲とともに名曲中の名曲、旋律、構造ともに円熟の極みに達し申し分ない。そんな磨きの掛かった難曲だけに好演が少ない中、イツァーク・パールマン(Vn.)/ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Vc.)/ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団盤はまともな一枚。先ず以って印象的なのが豪壮、リッチ、コントラストの効いたオケ、普段中性的なハイティンクが珍しく奮っており交響曲的だ。それに鈍臭い箇所はあるものの無難にこなしたチェロそしてくっきり、しゃっきりした、所々熱が入り気張るヴァイオリン、まずまず聴ける。中でも終楽章が闊達、覇気があり好調だ。2月4日朝8:39~約34分間。

318. 好印象も好演ならばこそ、マヌエル・ポンセ「南の協奏曲」:「南の……」との看板だけで地名や地方を冠した曲にあり勝ちなメロディーの乏しい平板な風景画か、と思いきやソロ(ギター)がオケに絡み付き変動するので退屈させない。曲名通り南国調の香りいっぱい、殊に終楽章はソロとオケの掛け合いで如何にも協奏曲らしい。そうした好印象も好演ならばこそ、シャロン・イズビンのソロ、ホセ・セレブリエール指揮ニューヨークフィルはくっきり、はっきりの色彩感豊かなオケが曲想にぴったり、流石一流だけに響きも上質、ソロもオケに埋もれること無く主張していて好ましい。双方相まって異国情緒を遺憾なく発揮している。2月17日朝7:55~約28分間。

319. 声楽界の金字塔、ペルゴレージのスターバト・マーテル:別名「悲しみの聖母」、彼の短い人生最後病躯に鞭打ち全身全霊を傾けた力作、と同時に声楽界の金字塔的傑作である。全12曲とも揃って精神性が高く、メロディアスで真摯、心に沁み入る、バロック音楽屈指の精華。ヌリア・リアル(ソプラノ)/カルロス・メナ(カウンターテナー)/フィリップ・ピエルロ指揮リチェルカールコンソートの演奏だが、ソロ陣が粒揃い、特に清美なソプラノは印象的だし、オケもしっとりとして透明度が高く、程良く抒情的、崇高な曲想をよく表出している。古楽様式を意識させないところも好ましい。2005年の収録だけに音質も高精度。2月19日放送の「古楽の楽しみ」にて。

320. リヒテルが期待に応えた、ラフマニノフの「音の絵」:絵画性を標榜する音楽は凡そ何かのインスピレーションを表現しようとする余り音楽性が二の次になりメロディーなど乏しい。この曲も同様で感動して聴いたためしがない。ただ異様なムードを醸しているので演奏次第では様になろうかと兼ね々思っていた。果たしてスヴャトスラフ・リヒテルが期待に応えてくれ曲の真骨頂を余すところ無く表出している。タッチが精緻で奥深く、明暗のコントラストが際立つ。艶やかでムーディーでもある。op.33から第9、5、6曲、op.39から第1、2、3、4、9、7曲を3月4日朝8:02~約38分間。

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