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326. 威風堂々とした言わば豪演、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2:ロマンチックなメロディーに彩られた名作とされるが、どろどろしてよどんだ印象を否めず手放しに喜べない。どの位カバーできるかが演奏の鍵だが、アレクシス・ワイセンベルクのソロ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンフィルは威風堂々とした言わば豪演を披露。ソロは剛腕、機敏、オケはパンチが効いて豪壮、カラヤンが何時になく奮っている。双方ともたっぷり歌うが躍動していて濃厚かつ充実している。どろどろ、ねっとり感がコクに好転しラフマニノフの真骨頂が出た。またオケの上質な響きは流石老舗の貫禄を示すもの。ただラテン風な快演を望む向きからすると双方もう少しすっきりして欲しかった。4月27日放送の「名演奏ライブラリー」にて。

327. ラローチャの十八番、グラナドス「スペイン舞曲」:凡そ地名を冠した曲は風景描写等印象に終始し水っぽくて聴いてられないが、ことスペインものに限ってはラロの「スペイン交響曲」、アルベニスの「スペイン組曲」と「スペインの歌」そして当曲、いずれもメロディーが異色で南国の色彩が濃厚、聴き手を退屈させない。スペイン交響曲以外はピアノの小品集で、いずれもアリシア・デ・ラローチャが得意としており当曲も好演を披露、テンポ、強弱、リズムとも彼女のお国ものだけに堂に入っている。また艶、温もりもあり情感豊か。12曲からなっており粒揃いだが、中でも第5,7,10,11,12曲は殊に異色でムーディー、凝ってもいる。5月13日14:46~約22分間。

328. 緻密で張りのある剛力演、ベートーヴェン・ラズモフスキー第1:彼中期、旺盛かつ油の乗った時期に生まれた弦楽四重奏曲op.59の中の第1番。ただ同第3番などと比べメロディーが質素なこともあり親しみにくいが、演奏次第でこの曲も真価を発揮する。すなわち今一なメロディーでもやがて複雑に展開、発展し百花繚乱、それを剛性、弾力の強いガシッとした骨格で支える濃厚かつ充実した力作。さて難曲なので碌な演奏が無い中、珍しくライヴに恰好なのを見付けた。レオンコロ弦楽四重奏団が緻密で張りのある豪壮な力演を奏でてくれた。陰と陽、緊迫と開放のコントラストが直に効いて一瞬我を忘れる。ボーイングに色艶もあり臨場感抜群、コンサート会場の目前で弾いているようだ。なおウェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章も弾いておりこれも好演だ(2024年4月第一生命ホール)。5月14日放送の「ベストオブクラシック」にて。

329. オケ、指揮者、ホールまで地元ならではのライヴ好演、シベ2:シベリウスの交響曲と言えば先ずこの第2番であろう、全4楽章揃ってメロディアスなので親しみ易いし、演奏次第だが、巧く北欧の幻想的なムードに包まれれば一時旅したような気になれる。殊に終楽章はぐんぐん盛り上がる第1主題は堪らない、天空を貫き、その先に未知の澄み切った世界が広がる、そして木管が奏でる第2主題も哀愁いっぱいだが、優しく語りかけて来るようで別世界に居ても寂しくない。こんな曲想を見事に奏でたライヴが近年あった、エサ・ペッカ・サロネン指揮フィンランド放送交響楽団の演奏で奥行き深く、強弱のコントラストが効き、抒情的、劇的でもある。迫力が漲っていて臨場感一入だが、マイクが近く各パートが鮮明に聞こえるからだろう。ライヴでも収録を前提にしたのか素晴らしい音質(2024年12月ヘルシンキ)。5月21日放送の「ベストオブクラシック」にて。NEW

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