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331. デュ・プレが迫真の力演、ドボルザークのチェロ協奏曲:チェロ協奏曲ならば先ずこのドボルザークであろう、ソロの活躍は勿論オケも重厚な造りで交響曲張りだ。そんな名曲なだけに幾多の録音がある中、ジャクリーヌ・デュ・プレのソロ、セルジュ・チェリビダッケ指揮スウェーデン放送交響楽団の演奏は意外にも格別好かった。常々中性的でパっとしないデュ・プレが迫真の力演を披露、青年の演奏とは思えない円熟味を醸し、ふくよかなポルタメントが効いてヒューマニスティックだ。殊に中間楽章は熱が倍加し声楽と錯覚させるような弦の息づかいまで感じる。第1楽章そして幾分非力の否めない終楽章もややスローペースでじっくり歌い上げ個性が光る。オケの援護も大きい、交響曲さながら図太くメリハリを効かせソロを引き立てている。1967年のライヴ(ストックホルム)ながら好音質なのも幸運だった。7月17日朝8:26~約48分間。

332. セルもゼルキンも本領発揮、ブラームスのピアノ協奏曲第1:ピアノ協奏曲にしては重厚で同第2番よりストレートに迫り来る彼の代表作、かつベートーヴェンを上回る傑作である。演奏には剛腕のソロと劇的で壮大なオケが想定されるが、ルドルフ・ゼルキン/ジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団が期待に応えてくれた。セルが奮い立ち渋く締まり緊迫した演奏を披露、そんな豪壮なオケにゼルキンは第1楽章こそやや劣勢だが、中間楽章からは押しの強さを発揮し一音々切々深く刻み込み、終楽章はオケとの力比べ、ひいては双方の響きがくっきり重なり合い正に一大交響曲の体、フィナーレもバシっと決まり聴き応え十二分だ。7月20日放送の「名演奏ライブラリー」にて。

333. 不満な作でも気にならない熱演、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲:彼が未だ若年の頃の作とか、流石青春の息吹を感じる溌剌とした作風、しかし聴き処はメロディアスな第1楽章のみ、先ず々の第2楽章そして付け足しみたいな魅力薄な残り2楽章。そんな曲の不満が気にならないのがエベーヌ四重奏団/ベルチャ四重奏団の演奏、情熱いっぱい、エネルギッシュ、重厚、濃密に仕上げ全楽章とも好調だった。各メンバーとも押し出しが強く弦8本とは思えない迫力も感じたが、ライヴ(2025年3月28日TOPPANホール)ながらもマイクの位置等気配りが故と裏方にも感謝したい。8月1日放送の「ベストオブクラシック」にて。

334. 非凡なホロヴィッツに打って付け、シューマンの「子供の情景」:彼の遺したピアノ曲の代表的名作でポエムが次から次へ湧き出る音楽の泉、題名からのイメージにこだわらなくてよいむしろ演奏家に自由な発想を促すような軽妙で開かれた造り、従って楽譜をなぞるだけでは到底様にならない。そこで頼れそうなのがウラディーミル・ホロヴィッツ、彼は強烈な個性の持ち主で凡演は先ずあり得ない。果たせるかな、滋味を湛えた艶やかな好演を披露してくれた。「子供の情景」を超越した枯淡な詩情を表現している。所々強烈なアクセントがありかつてのホロヴィッツを想起させるが、概ね角が取れ聴き易い。1962年の録音だが彼の円熟期で腕は未だ確か。8月19日朝7:39~約21分間。それにしてもナチュラルでいて旨味の濃いのがハスキル、久しく聴いていないが彼女の妙演は堪らない。

335. 往年の巨匠のお蔭で見違えた、ダマーズ・フルートとハープソナタほとんど馴染みのない作曲家のもので曲自体に際立つ特長がないが、演奏家に恵まれ名作に聞こえた。往年の巨匠・ジャン・ピエール・ランパル(フルート)とリリー・ラスキーヌ(ハープ)の手に掛かればやはり見違える。リッチで優雅な、輝かしい音色で朗々と奏でるランパル、芯がしっかりしていて流麗なラスキーヌ、味の濃厚な洒落た純フランス風の秀演だ。1964年の収録だが、幸い艶やかで明晰な音質で楽しめる。改めて思うことだが、フルートとハープは相性がとても良い、モーツァルトの協奏曲K.299はその筆頭であろう、これもランパルとラスキーヌだ。8月27日朝7:52~約21分間。

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