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1.ブラコン雑感 --------ブラームスのヴァイオリン協奏曲op.77の名盤は?

    ヴァイオリン協奏曲の名曲とクラシック音楽ファンなら誰もが推すこのブラームスであるが、名盤となると一概には難しい。すなわちジネット・ヌヴーとデ・ヴィートとが双璧で、どちらかには決め切れないのである。ヌヴーのはイッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響、ヴィートのはシュバルツ指揮フィルハーモニア菅、前者は1948年のライヴ録音らしいが、めずらしく録音状態がよく、後者と肩を並べる。さて演奏であるが、ヌヴーは女流ながら彫りが深く、スケールが感じられる。また艶やかで、きめ細やかなニュアンスに引き込まれてしまうようだ。ヴィートは艶やか、歌謡的であるが、内省的で精緻である。ヌヴーよりは肌触りが滑らかで、ヌヴーは比較的鋭角でダイヤだとすれば、ヴィートはルビーと言ったところか。細かく比較すると、第1楽章は彫りの深さとスケールの点で概してヌヴーの方が良いが、カデンツァからコーダにかけては殊の外密度が高く精緻な点でヴィートの方が良い。中間楽章は情緒たっぷりひたむきに歌い上げながら上品で内省的なところが魅力なヴィートの方がよい。終楽章は両者甲乙付け難い。オーケストラはシュバルツは標準的、イッセルシュテットの方が起伏があって巧い。またヴィートにはフリッチャイ指揮ベルリンリアス交響の盤もあるが、これもシュバルツ盤同様にすばらしい。なおメニューインとフルトヴェングラー指揮ルツェルン祝祭菅との盤もメニューインがフルトヴェングラーが描く壮大なドラマの分身と言った感じで、交響曲を聴くかのような魅力がある。以上のモノラル録音盤に対してステレオ盤はと言うと、ダビッド・オイストラフ&クレンペラー指揮フランス国立放送局菅はオーソドックスだが、シェリング&ハイティンク指揮コンセルトヘボー菅、グリューミオ&ベイヌム指揮コンセルトヘボー菅、パールマン&バレンボイム指揮ベルリンフィル、いずれも思わしくない。そんな中でフランチェスカッティは彼独特の華やいだ音色が随所に聴け(クーベリック指揮バイエルン放送交響)、ムターもみずみずしい音色でひたむきに歌っていて一聴に値する(カラヤン指揮ベルリンフィル)。ミルシュテインも線がやや細めだが力演で、しっかり歌い上げた第2楽章など悪くない(フィストゥラーリ指揮フィルハーモニア)。好みにもよるが魅力的な1枚がある。往年の若手女流ミシェル・オークレールとオッテルロー指揮ウィーン交響との盤である。彼女の師であったティボー譲りの艶、滑らかさがあり、ほどよいネバリが垣間見える。ただ芸格は今一つ、部分的に未熟さを感じる。オケは颯爽として規模が大きく、独奏ヴァイオリンとの調和もよい。録音も申し分ない。オークレールはもっと弾き込めば名盤が生まれたものと思うが、早々に引退してしまって残念だ。

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