2.メンコン雑感----メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲op.64の名盤は?
この曲は天がこの時だけメンデルスゾーンにひらめきを与えた至宝で、何度聴いても飽きない名曲中の名曲である。しかし名演奏はと言うと、1950年代はじめのデ・ヴィート&M.サージェント指揮ロンドン響の旧録音まで遡らねばならない。ルビーのような音色と高雅な歌謡性が特長で、ぐいぐい引き込まれていく。ただ音質が良くない。彼女にはその約10年後にケンペ指揮バンベルク響とのライブ録音があり、NHKのTV放送で感激したのが忘れられない、演奏スタイルは変わっていなかった。他に好演がないか最近数々のアーティストのステレオ録音を聴き比べた。その結果グリューミオーは第1楽章ではオーケストラの前面に立って彼らしい可憐な艶やかな香りを放ちながら丁寧たっぷり、巨匠の貫禄を見せている。オケも充実していて好演だ。一方第2、3楽章は何故か打って変わって淡白に終始している(クレンツ指揮ニューフィルハーモニア菅)。ヴェンゲーロフはのびやか艶やかで、細かいニューアンスまでよく行き届いていて全楽章とも上出来、欲を言えばもう少し説得力がほしい。録音がデジタルのためか臨場感が出ている(クルトマズア指揮ゲバントハウス菅)。パールマンはのびやかだが、か細い、第2楽章などはもっと踏み込んでほしい(プレヴィン指揮ロンドン響)。ジョシュア・ベルは情感豊かで精緻だが、か細い、オケは好テンポで、きめ細やか(マリナー指揮アカデミー室内菅)。ベルの再録盤はソロ、オケとも思わしくない(ノリントン指揮カメラータ・ザルツブルク)。彼にはライブもあり、第1楽章が情熱的で表情豊か、他の楽章はまずまず(ユロフスキー指揮ヨーロッパ室内管)。以上から第1楽章だけならば巨匠のグリューミオー&クレンツ盤、全楽章とも平均して上出来なのはヴェンゲーロフ&クルトマズア盤そしてオケがさわやかで均整のとれたジョシュア・ベル&マリナー盤も一聴に値する。