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7.古楽演奏のご苦労と課題

 「古楽」と言う言葉はいつ頃生まれたものか、多分N.アーノンクールやG.レオンハルトが「古楽」の演奏様式を追求し始めた1950年代後半ではなかろうか。またその定義は明確ではなく、バロック音楽は「古楽」としてよく耳にするが、モーツァルトを弾く古楽アンサンブルもある。いずれにしても古い演奏様式を再現するのが目的のようだ。そのために古い様式の楽器、いわゆる「古楽器」の調達に苦心して来た。博物館や旧家などにあって荒廃したものの修復や古楽器をモデルに新造したもの等である。そして古い様式の奏法について研究を重ねて来たことと思う。なるほどそのお蔭で当活動草創期の上記2名匠の演奏は新鮮で、作曲当時の雰囲気が伝わる感動的なものである。しかしその後続々誕生してきた古楽アンサンブルには見るべきものが少ない、多くは演奏がつたない。一見簡素、素朴だが、貧相なことが多い。弦楽器ばかりでなく、木管特にフラウトトラヴェルソも低調なことが多い、吹きにくければフルートで結構なのだが。とにかく古楽器を揃えるだけで精一杯なのか巧く鳴らせていない印象。例えばバッハのブランデンブルク協奏曲を聴くとモダンアンサンブルのパイヤール室内菅の方が快適で華やか。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はバロックヴァイオリンが貧弱で聴けない。何故なのか、多分古楽器を奏でるアンサンブルは「古楽アンサンブル」と言うだけで注目を集められる、そんな胸算用が?。すなわち技量が二の次になっている。古楽器がつたないのではなく、廃れた原因がそうであったように操作、扱いが厄介なのだ。先述の2名匠がモダン楽器で研鑽を積み重ねながら古楽器に挑戦しようやく物に出来たことを思えば、昨今の古楽アンサンブルは例外はあるものの取り組み姿勢が安易なのではないか。ライバルの好演を聴くなりして刺激を受け、腕とセンスを磨き、練り抜いてから成果を披露してもらいたい。

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