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9.聴くことこそ音楽の基本、聴き上手でありたい

    クラシック音楽に限らず音楽は演奏しないことには聴けないが、聴かなければ意味がないので聴き手が大事である。心ある演奏家・アーティストは聴き手にも回り、時にはライバルの演奏に感動するとか。名ヴァイオリニストのティボーはエネスコの精神性の深さを高く評価し、エネスコはティボーのことを「初めて聴いた折胸苦しくなるような歓喜の中で身もだえした」と評している。名アーティストは同時に名聴き手であるということ、逆に名聴き手であることが名アーティストになる基本条件と言える。スズキ・メソードを創設した鈴木鎮一はアーティストと言うより名聴き手であり、彼の音楽教育は楽譜をなぞることより聴くことに重点が置かれ、大家のレコード演奏を模範とした。以上から聴くことの大切さがわかる。聴けば聴くほどセンスは磨き抜かれ、それが演奏に教育に活かされてゆく。一般の聴き手もしかり、聴けば聴くほど情操が豊かになり、時には新たな発見に心が躍り、クラシック音楽の存在、作家そしてアーティストに感謝する。こうした感動はクラシック音楽との出会いがなければ一生あり得ないから、愛盤家の皆さんは過去何がしかの好機があったはず。私は運良く物心付いた頃から聴き放題であったが、中学校での音楽授業しかり、高校や大学時代にカラヤンの格好よさに惚れこんだのが契機とか、様々あろうが、聴ける耳を持てて幸せである。私など歳を重ねた現在聴くことが唯一生き甲斐になっている。そして今でも聴けば聴くほど耳が肥えて来て、昔無頓着だった曲が運良く出会った名演奏のお蔭で好きになったり等新たな発見もある。一方演奏の良し悪しに過敏になって不満も募って来るが、耳を研ぎ澄まして名曲、名演奏をご紹介できることに満足でもある。聴く基準は下手では困るが、先ず在り来たりかどうか、魅力がどこかにないか、品格の程度、音質の精度はどうかであり、逆にアーティストには個性を磨いて、魅力あるものに練り上げてもらいたい。そのために先ず聴き上手になることが一番である。

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