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過去の掲載記事(69)

341. ソロとオケよくマッチした快演、ニルセンのフルート協奏曲:彼の代表作かつ同ジャンルの数少ない名作の一つ。第1楽章など重厚かつ変幻自在、ソロはもちろんオケも躍動的、正に別天地、別世界を訪れた飛躍した気分にひたれる。さて初耳のセバスティアン・ジャコー(フルート)とヘルベルト・ブロムシュテット/NHK交響楽団の演奏ライヴだが(2025年10月9日サントリーホール)、高らかによく通るソロと颯爽、豪快なオケ、双方よくマッチしていて聴き応え十分。ソロと各々クラリネット、ホルン、ファゴットと掛け合い、融合する部分々が幻想ムードを盛り上げていて印象的だ。NHKFM「聴き逃し」:10月30日放送の「ベストオブクラシック」にて。

342. ヤンセンが奮い立った、シベリウスのヴァイオリン協奏曲:このジャンルの名曲中の名曲、北欧の涼やかでやや暗い幻想的なバックに透明でシャープなソロが浮き立つ絶妙作である。しかし超難曲なたけに名演に恵まれず、殊にソロに切れ、緊迫感、コントラストがないと聴くに耐えない。ジャニーヌ・ヤンセン/クラウス・マケラ指揮オスロフィルハーモニー管弦楽団の演奏もその点は今一歩なのだが、たっぷりしていながら気張って深く掘り下げた情熱的なソロと大柄でムーディーながら重点、要点をしっかり押さえたオケ、互いによく引き立て合っている。久々のクリーンヒットだ。11月18日朝7:37~約36分間。

343. 正にベートーヴェン、内田とユロフスキによるピアノ協奏曲第3:彼のピアノ協奏曲としては珍しく彩りがありエレガントな曲想、ベートーヴェン嫌いな方でもこの曲ならば行けるかもしれない。ところが内田光子のソロ、ウラディーミル・ユロフスキ指揮ベルリン放送交響楽団のライヴ(2024年12月ベルリン)は意外にベートーヴェン臭い。ソロは伸びやかだが腰が据わって力強くオケにめげず健闘、細緻、エレガントでもある。取り分けカデンツァが雄大で見事。オケは質はともかく、大規模、堂々として重厚、劇的、正にベートーヴェンそのものだ。ただ録音は元々度外視だったのだろう、精度が甘く殊にオケがボワッと聞こえ締まらない。NHKFM「聴き逃し」:11月13日放送の「ベストオブクラシック」にて。

344. ノトスQによる精力的な名演、ブラームスのピアノ四重奏曲第1:彼の名作は室内楽にも及ぶ、殊にソロ・ピアノのもの、中でもピアノ四重奏、同五重奏曲はいずれも練度の高い傑作揃いだ。この第1番も重厚な充実した名作、奥深さ、エネルギッシュな逞しさが際立っている。さて演奏だが、弦の活躍は勿論、ソロが鍵を握る、燻したような枯淡な味わいが出せるか否か。ノトス四重奏団はこのジャンルに特化しているらしく、ソロは突出せず曲想を大事に弦と溶け込むように強弱自在、何よりなのがしっとりした、粘度、重度の高い音色、ブラームスにぴったりだ。弦も堅調で渋く精力的、ソロ共々凝縮していて緊張感が心地良い。LP初期のデムス/バリリQ以来の名演である。12月1日朝8:16~約42分間。

345. インテグラが旺盛で厚盛り、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲op.74:彼中期の作だがラズモフスキーから更に進化した凝った造り、「ハープ」の名の通り第1楽章はピッツィカートを多用する他聴かせ処がいっぱい、次楽章は地味だが奥深く踏み込み彼後期を予想させる。そして快活な第3楽章とここまで見事なだけに終楽章は見劣りする。これをまともに聴かせるにはかなりの練度が要る中、クァルテット・インテグラが好演を披露、旺盛で厚盛り、コントラストを効かせ雰囲気上々、各メンバー共よくこなれている(2025年6月、第一生命ホール)。ライヴなのに抜群の音質には驚き、臨場感一入だ。なお同op.135も好調、一聴に値する。11月26日放送の「ベストオブクラシック」にて。NEW

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